1927年、武蔵野鉄道(現・西武鉄道)が支線・豊島線を開業させたことが豊島園にとって大きなターニングポイントになった。練馬駅から一駅だけ分岐した豊島園駅は、豊島園の目の前に開設された。わずか1キロメートルの支線だが、同路線が開設されたことによって遊園地までのアクセスは飛躍的に向上。豊島園の来園者も、武蔵野鉄道の利用者も急増した。
豊島園の来園者によって、武蔵野鉄道の利用者は増加。それでも、武蔵野鉄道の経営は安定しなかった。
他方、藤田が開園させた豊島園は武蔵野鉄道との資本関係がない独立経営の遊園地だったために相乗効果を発揮できなかった。それが豊島園と武蔵野鉄道の経営を逼迫させた。
武蔵野鉄道を救済するべく、堤康次郎が率いる箱根土地(現・プリンスホテル)が手を挙げる。こうして箱根土地が武蔵野鉄道の経営再建を手がけていくことになるが、箱根土地は集客力のある豊島園も傘下に収めて相乗効果を図った。
こうした歴史的な流れもあり、としまえんと西武は切っても切り離せない関係になった。両者の深い関係は、西武池袋線のターミナルとなっている池袋駅からは豊島線に直通する電車が走っていることからも窺える。
池袋駅からの直通電車に乗れば、池袋線と豊島線が分岐する練馬駅で乗り換える手間がいらない。そうした便宜を図るほど、としまえんは西武にとって大きな存在でもある。
それだけに、としまえんの閉園は西武に大きな打撃を与えることが予想される。しかし、
「としまえんの閉園は残念ですが、閉園しても、すぐに豊島線の利用者が減少するとは考えていません。そのため、閉園後も豊島線を廃止することはありません。また、豊島園駅という駅名を変更する予定もありません」と断言するのは、西武鉄道広報部の担当者だ。
西武にとって、としまえんが集客力の大きい遊園地であることは間違いない。それがなくなるのは豊島線にとって痛手だろう。
しかし、としまえんの隣には、西武グループが経営する温浴施設「豊島園 庭の湯」が2003年にオープンした。また、西武系列ではないものの、駅前にはシネマコンプレックス「ユナイテッド・シネマ としまえん」もある。
豊島園駅という駅名もあって、としまえんばかりがクローズアップされるが、こうした諸施設に足を運ぶ客も豊島園駅を利用している。としまえんの来園者ばかりが豊島園駅を使っているわけではないのだ。