国際情報

【アメリカ発】中国化に進むキューバの「不完全社会主義」

カストロ兄弟を頂点として作られた社会構造の限界も見えている(EPA=時事)

 本来、すべての国民に権利や財産の平等を与えるはずだった共産主義は、多くの国でそれとは真逆の社会を生み出している。共産主義の成功例とされる中国やキューバも例外ではない。政治学や国際経済についての著作が注目を集める新進のライターErnesto J. Antunez氏が、「共産主義の楽園」と見られることも多いキューバの実態をリポートする。

 * * *
 共産革命によって成立したキューバでは、平等主義の多くはすでに消え去っている。カストロ一族にとどまらない「新階級」が社会のあらゆる指導的地位を占め、付随する特権(権力、金、地位、名声など)を独占的に享受することになった。

 1959年に革命を成し遂げたフィデル・カストロは、病気により2006年に弟のラウル・カストロに権力を譲ることを余儀なくされるまで、長い間この体制の頂点に一人で座っていた。その頂点のすぐ下に、2つのグループ、すなわち「ノーメンクラトゥーラ(共産貴族)」のエリートと、その執行機関としての高位の軍将校が座っている。キューバ軍は一時、直接的もしくは間接的に経済の60%以上を握り、党エリートに匹敵する力を持つことに成功したが、「革命の英雄」アルナルド・オチョア将軍が1989年に粛清されて以来、軍は完全に党の管理下に置かれることとなった。

 その下に位置する「中間層の上層部」には2種類の異なる者たちが生息している。第1は、貧しい国営商店の経営者が、貴重な食料品や物資を大量に闇市場にばらまいて裕福に暮らしているケースである(売りさばくほかに家族や友人のために個人的に蓄えられていることは言うまでもない)。第2のタイプは、キューバ共産党の「つるつるすべる柱」を少しでも高くまで昇ろうと格闘する政治局員たちである。停電が多く、エアコンは手の届かないぜいたく品と考えられている湿度の高い亜熱帯の国で、エアコンの効いた広々としたオフィスで行われる比較的快適な戦いだ。

 そして、中間層の下部には数えきれないほどの警察官や下級官僚らがいて、彼らは自分たちの収入を増やすために、秘密の私企業を運営するという反革命的な連中から賄賂を受け取り、あるいはあからさまに恐喝している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン