◆70代以上の感染者は1割に上昇している
だが実際は、「夜の街」以外で感染は急拡大している。たとえば、7月26日の都内の新規感染者239人のうち、感染経路が判明したのは95人だった。そのなかで「夜の街」関係の感染確認は14人だったのに対し、「家庭内」での感染は33人にのぼっている。すでに家族からの感染は夜の街の2倍以上にのぼっているのだ。
家庭内感染の危険は、新型コロナ発生直後から世界が認めてきた。WHOがサンプル数の多い中国・広東省および四川省で行った調査では、78~85%のクラスターが家庭内だと報告された。
さらに、ここ最近の傾向で顕著なのが、若者以外の感染者が増えていることだ。
前述の都内の26日の結果では、感染者のうち約60%が20~30代で、40代以上の中高年の割合は30%以上となった。そのなかでも、70代以上の感染者は、全体の10%で、24人の感染が確認された。
そのなかには、孫から感染した70代の男女2人や、高齢の夫婦間で感染した計5人など、高齢者の「家族道連れ感染」が含まれていた。
埼玉医科大学客員教授の奥真也さんが指摘する。
「行動を自粛する度合いが少ない若い世代で先に感染が起こり、徐々に高齢者に広がっていくのは当然の成り行きです。高齢者は基礎疾患を持つ人の割合が高く、この先、重症者が増加することは避けられません。その状況を前提にした冷静で迅速な対応が求められます」
昭和大学客員教授(感染症)の二木芳人さんが問題視するのは「感染者の処遇」だ。
「軽症あるいは無症状の患者は自宅療養か宿泊療養を選べることとなっていて、すでに400人以上の患者が自宅療養になっています。ほかにも、入院か宿泊療養か決まらず、調整中として自宅待機になっている患者が700人以上いる。合わせて1000人以上の感染者が不適切な状況下に置かれており、家庭内感染や急な感染増悪のリスクを負っているのです」
冒頭の調査にもあるように、もともと高齢者の多い日本は新型コロナの重症化リスクが世界で飛び抜けて高く、このまま中高年に感染拡大すれば、一気に危機的状況となる。
一石さんが話す。
「このままだと、ねずみ算式に重症者が増加する可能性があります。感染者が多ければ多いほどウイルスが変異を繰り返し、より凶暴化する恐れがあります。現在、若い人たちの元気な細胞で育っているウイルスが突然凶暴化して、高齢者を苦しめるようになることが最悪のシナリオです」
しかもこれから先、お盆の帰省などで高齢者が若者と接触する機会が増え、家庭内感染で重症化する人が激増する可能性も否定できない。