夜間学校が抱える問題を指摘する前川喜平さん(撮影/浅野剛)

「文科省の調査では、入学目的の3割近くが『日本語を学ぶ』である一方、形式卒業者や不登校経験者の多くは日本語の読み書きに問題はなく、高校受験をめざす人も多い。生徒の幅広いニーズに対応するには、無償の日本語学校や、都道府県レベルで広域に対応する夜間中学の整備といった対策が必要です」(前川さん)

 東京・葛飾区の双葉中学校夜間学級のように、東京では日本語学級を作るなど対応が行き届いているところもあるが、それ以外のほとんどの地域では課題を抱えている。

 解決法の1つは、自治体ではなくボランティアが運営する自主夜間中学による支援だ。前川さんも現在、2か所の自主夜間中学で勉強を教えている。

「一斉授業をする公立夜間中学と違い、自主夜間中学はマンツーマンがほとんど。スタッフに教員免許は必要なく、何でも教えられて何でも学べるのが自主夜間中学の面白いところです。ぼくが『福島駅前自主夜間中学』で教えているのは“新聞の読み方”。日銀の金利政策や核燃料プルトニウムの問題など新聞の一面をきちんと理解しようと思ったら、相当量の知識と読解力が必要です。時にはぼく自身も四苦八苦しながら一緒に学んでいます」(前川さん)

 文科省の事務方トップを務めた前川さんにとっても、「現場」はいつも新鮮だ。

「『あつぎえんぴつの会』(神奈川県厚木市)では最初は鉛筆の持ち方がわからなかったという70代の男性が、ペットボトルのお茶『綾鷹』を持ってきて“この字を書いてみたい”とおっしゃったんです。画数が多くて形も難しいこの2文字の書き方を手取り足取り教え、やっと書くことができたとき、この男性は心からうれしそうに笑っていました」(前川さん)

※女性セブン2020年8月13日号

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