ただ、立場が変わると作品の楽しみ方も変わってくる。第1話の視聴以降、今回はイラッとした。まずは営業事業部・部長の宇野一平(塚地武雄)の、部下に対するえらっそうな態度だ。こういう人種が、どこの会社にもまだゴキブリのように存在していることだけは、女性たちから報告を受けている。新入社員には大したことのない自分の社歴と人生経験を語り、トラブルが発生すれば派遣社員に責任転嫁。きっとこの手のオッサンは、在宅勤務になってPCを扱えずにパニックを起こすタイプだろう。救いはドランクドラゴンの塚地が演じているので、どんなに頑張っても心底いやらしいオッサンには見えなかったことか。
「日本の社会は沈没です」by大前春子
そして「私なんて」が口癖のオドオドした派遣社員・福岡亜紀(吉谷彩子)。契約更新にやたら怯えている姿も疑問だった。振り返って欲しい、今は通常通りに社会が回っていない部分もあるけれど、福岡が毎日同じ会社に来て、言われたことをできるだけでも、スキルはある。これは断言できる。もっと自分を高く見積もって働いてもいいと思う。ただ、まだスキルも積まず、自己主張したことが叶わないと職場で泣く千葉小夏(山本舞香)は問題外。数年間でも働いた実績を作ってからでないと説得力もない。それから、職場で泣くのは一番よくない。泣くならトイレで泣け。
こんな風に、第2シリーズはモヤモヤしながら見て、自分も変わったのだと実感。もし出版社の社員のままだったら、また違った視点だったのかもしれない。でも、そんな気持ちを今回も大前さんが気持ち良く、ぶった斬る。
「このままだと私たちも、あなたたちも溺れ死にます。日本の会社は……日本の社会は沈没です。日本沈没!」
その通りなのである。でもこのセリフは、コロナ騒動の日本を反映しているわけではない。働き方改革云々とか、テレワーク。ついには旅行しながら働くような案も出てきている日本で、バブル期のような風潮が残っているようでは社会が終わる。意味のない働き方が積み重なって、果ては既得権益だけが残るような社会だったら本当に沈没だ。そんなことを伝えたかったのでは? というのは私の推測。
大前さんのように、100%のスキルで働くことは難しい。でも60%くらいなら、真似できるかもしれない。真っ直ぐに自分を貫く、彼女の後ろ姿を最終回で見守りたい。
【プロフィール】こばやし・ひさの/静岡県浜松市出身のエッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター。これまでに企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊以上。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。