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落合陽一本人が語る個展の見どころ「噛みしめ方は何通りも」

思い思いに展示を楽しむ来場者たち。写真右奥の畳の上にあるのが「レビトロープ」(2017)、その向こうの円窓状のものは「焦点の散らばった窓」(2019)

 ウィズコロナの時代にあって、展示イベントは広く空間を使わなければ実現すらできなくなった。しかしそこを逆に活かし、今回の展示は「解像度の高いものを置いてそれをじっくり考えてもらう空間構成にした」(落合氏)のだという。

「“噛みしめ方が何通りもあるもの”をゆったり噛みしめるには、フィジカルな空間で物を見るということは非常に意味があることだと思う」(落合氏)

 事実、同展で来場者は思い思いの時を過ごしているように見えた。「大学生以下無料」という大盤振る舞いのせいか、筆者が訪れた日は若者の姿が多かったが、歩き回って何度も反芻したり、作品と一緒に置いてある、制作に使われた道具と見比べたり、ところどころ床や壁に書かれた落合氏のメモ書きといった遊び心を探したりなど、誰もが展示の体験という時間そのものを楽しんでいるようだった。

展示風景より。手前の枯れ木に添えられた〈ただの木です〉のメモ書きが笑いを誘う

 枯れ木のオブジェのようなものが置いてある床をよく見ると、〈※これはただの木です 作品ではありません〉といったメモが書いてあり、笑いを誘う。6個の球体が空中に静止し浮遊した状態でゆっくり公転する『レビトロープ』は、同展では仏具とともに畳の上での展示。風鈴にも似た音がときおり静かに響く中、渋谷の街をバックに回る銀球に、しばしベンチに腰掛けて見入る人が多かった。

 スマホでQRコードを読み込むことで、落合氏自身による展示の解説が聞けるのも、密を避けるのに一役買っている。展示の最後に〈さて、もう一周してみよう!→〉という落書きがあるため、気兼ねなく2周目に突入できるのも嬉しい。1周目は自身で感じ、2周目は解説を聞きながら、といった楽しみ方もあるようだ。落合氏自身が言うように、噛みしめ方が何通りもある展示のため、訪れるたびに新たな発見があるかもしれない。

◆取材・撮影・文/大木信景(HEW)

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