「商業化されているオリンピックならまだしも、お金が生まれず、教育の一環であり自己実現の場でもある部活動に大人の世界の分類を当てはめるのがいいのか、議論が必要です。車椅子に乗っていれば明らかに違うと区別できますが、義足の場合、大腿義足、下腿義足といろいろあり、誰が、何を基準に有利不利を区別するのかは難しいところです。すべてを厳格に区別しなければいけないという世界は、殺伐としたものに感じます」(沖野さん)
健常者と障害者とで活躍の舞台を厳密に分けることは、一般社会においてもそれを適用すべきとの誤ったメッセージを送ることになるかもしれない。それはパラスポーツの意義を考えたとき、得策ではないだろう。
ただ、こうした議論ができるようになったこと自体は、障害者スポーツが世に知られ、競技力が向上してきたことの証しであるから、ポジティブな側面だとは言える。前出の沖野さんは言う。
「義肢にも、アスリートの身体的にも、まだまだ伸びしろが残されている。今後、オリンピックの記録を上回ることも十分あり得ると思いますよ」
2021年8月に延期された東京パラリンピックではどんな記録が出るのか。いまから楽しみになってきた。
●取材・文/岸川貴文(フリーライター)