芸能

舘ひろし、渡哲也さんの遺骨に手を合わせることもできず

記者の取材に真摯に対応する舘ひろし

 寝室と呼ぶには広すぎる2階の部屋には、ベッドのほか、来客をもてなせるテーブルと椅子や、リハビリ用のウオーキングマシンが置かれている。2015年に心筋梗塞を患った際、妻の俊子さんが用意したものだ。

 その広い寝室で、渡哲也さん(享年78)の体調が急変したのは8月9日未明のことだった。午前4時に緊急搬送。病状を確認した医師は、

「体力がもたなそうです。長くても2週間と覚悟してください」

 と余命を宣告する。しかし、病と闘い続けてきた体はその2週間を耐えることができず、翌10日午後6時半、肺炎のために帰らぬ人となった。

 緊急搬送の前日まで、渡さんは元気だったと事務所関係者は語る。亡くなる3日前には、友人のみのもんた(75才)と電話で話をしていた。みのが寂しそうに語る。

「酸素吸入をしながらなので、息苦しそうなガサガサした声でしたが、それでも『なにしてる?』『元気になったら銀座で飲みましょう』と励まし合ってね。もう何年も、月初めに電話をくれるんです。こんなに律儀な人は芸能界広しといえど渡さんだけですよ」

 渡さんのデビュー作『あばれ騎士道』(1965年)や『東京流れ者』(1966年)など数々の映画で共演してきた女優・松原智恵子(75才)も声を落とす。

「私たち日活出身者は、年に一度くらい “仲間の会”を開いていたんです。(吉永)小百合ちゃんとか、和泉雅子さん、(高橋)英樹さんらとね。ただ、ここ3年ほど集まっていなかったので、浅丘ルリ子さんが『また集まって食事でも』と動いてくださったんです。今年6月に渡さんにもお声がけされたのですが『いまは体調を崩しているから、もう少し先のときに行けたら』とおっしゃったそうで…大変残念です」

 謙虚で律儀で真面目。オーラはあるけど、親しみ深い。渡さんを知る人の評価はおおよそこんな感じだ。

 渡さんが石原裕次郎さんの背中を追いかけたように、渡さんの背中を追いかけ、石原プロの“鉄の結束”を守り続けた舘ひろし(70才)はその性格にいちばん間近で触れたひとりだろう。しかしその舘も、渡さんの最期に立ち会えなかった。そして、密葬にも参列できていない。

「そこには、渡さんが俊子さんに遺した遺言が大きくかかわっているんです」

 とは、事務所関係者。

「『死に人に構う時間があるのなら、生きている自分自身のために時間を使ってほしい』というのが渡さんの遺言。これを俊子さんに口酸っぱく話していたようで、石原軍団は俊子さんの“遺言を果たす”という思いを汲み、いまはその言葉に従っているんですよ。舘さんは訃報を聞いた後のCMや映画の撮影も、普段通りにこなしています」(事務所関係者)

 しかし、事情をよく知る関係者の話はやや異なる。

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