国際情報

【アメリカ発】貧困層の肥満問題を政治利用してはならない

「社会問題」と「自己責任」のどちらを重く見るべきか(AFP=時事)

 世界では、今も飢餓に苦しむ子供たちは多い。一方で、先進国では「貧国と肥満」が社会問題になるケースが多い。安くて栄養価の高いファーストフードや清涼飲料水が食生活の中心になることが、ままあるからだ。科学的なアプローチで注目されるライターP.F. Whalen氏は、アメリカではそこに右派と左派の路線対立が輪をかけていると警告する。

 * * *
 ガーディアン紙の最近の記事で、筆者のLarry Elliot氏は、英国の低所得世帯で肥満が増えていることを指摘し、「問題はアメリカと同じです。より良い食事ができるようになれば肥満は減るでしょう」と述べている。彼は、低所得世帯は健康的な食べ物を買う余裕がないと主張する。この考えは、特に子供に関してあちこちで取り沙汰されており、アメリカではしばしば左派が社会問題として取り上げている。

 2008年の研究で、マサチューセッツ州の小児肥満が深刻であり、同州の全小児の30%が肥満であることが示されてから、小児肥満は特に注目を集めた。低所得世帯ではその割合が33.5%と高かった。ミシガン大学と国立衛生研究所によるその後の研究では、肥満は民族や人種よりも所得水準と相関関係があることが示された。同研究は、不十分な運動とファーストフードの摂取が大きな原因であると結論づけた。研究を主導したKim Eagle博士は次のように説明している。

《最終的には、この健康危機と戦うためには、ボトムアップ型の地域社会、学校、社会教育、そして問題解決のためのトップダウン型の立法措置が必要である。》

 この問題の解決にトップダウン型の措置が必要と考えるかどうかには、左派と右派で根本的な違いがある。個人的責任の役割について信条が異なるからである。親と政府のどちらに、子供たちに健康な生活を送らせる責任があるかという問題だ。左派はこう考える。政府はこの問題を解決しなければならない。子供たちがマクドナルドで食べ過ぎているので、政府が介入する必要がある。健康的な食品を買うには不便な地域に住む家庭も多く、政府は対策を講じなければならない。遊び場や運動場が近くにないのなら、それも政府の責任だ。

 一方、右派の人たちは、公共交通機関、道路や歩道、遊び場などのインフラは政府が提供すべきではあるが、最終的な責任は親にあると考える。親は、どこに住むか、子供に何を食べさせるか、子供にどれだけ運動させるかを決める立場にある。もちろん政府が教育に関与すべきだという点では左右の意見は一致している。

関連記事

トピックス

東日本大震災発生時、ブルーインパルスは松島基地を離れていた(時事通信フォト)
《津波警報で避難は?》3.11で難を逃れた「ブルーインパルス」現在の居場所は…本日の飛行訓練はキャンセル
NEWSポストセブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
宮城県気仙沼市では注意報が警報に変わり、津波予想も1メートルから3メートルに
「街中にサイレンが鳴り響き…」宮城・気仙沼市に旅行中の男性が語る“緊迫の朝” 「一時はネットもつながらず焦った」《日本全国で津波警報》
NEWSポストセブン
津波警報が発令され、ハワイでは大渋滞が発生(AFP=時事)
ハワイに“破壊的な津波のおそれ” スーパーからは水も食料品も消え…「クラクションが鳴り止まない。カオスです」旅行者が明かす現地の混乱ぶり《カムチャツカ半島地震の影響》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
夜の街での男女トラブルは社会問題でもある(写真はイメージ/Getty)
「整形費用返済のために…」現役アイドルがメンズエステ店で働くことになったきっかけ、“ストーカー化した”客から逃れるために契約した「格安スマホ」
NEWSポストセブン
牛田茉友氏はNHKの元アナウンサーだったこともあり、街頭演説を追っかける熱烈なファンもいた(写真撮影:小川裕夫)
参院選に見るタレント候補の選挙戦の変化 ラサール石井氏は亀有駅近くで街頭演説を行うも『こち亀』の話題を封印したワケ
NEWSポストセブン
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
技能実習生のダム・ズイ・カン容疑者と亡くなった椋本舞子さん(共同通信/景徳鎮陶瓷大学ホームページより)
《佐賀・強盗殺人》ベトナム人の男が「オカネ出せ。財布ミセロ」自宅に押し入りナイフで切りつけ…日本語講師・椋本舞子さんを襲った“強い殺意” 生前は「英語も中国語も堪能」「海外の友達がいっぱい」
NEWSポストセブン
大日向開拓地のキャベツ畑を訪問された上皇ご夫妻(2024年8月、長野県軽井沢町)
美智子さま、葛藤の戦後80年の夏 上皇さまの体調不安で軽井沢でのご静養は微妙な状況に 大戦の記憶を刻んだ土地への祈りの旅も叶わぬ可能性も
女性セブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト
NYの高層ビルで銃撃事件が発生した(右・時事通信フォト)
《5人死亡のNYビル乱射》小室圭さん勤務先からわずか0.6マイル…タムラ容疑者が大型ライフルを手にビルに侵入「日系駐在員も多く勤務するエリア」
NEWSポストセブン