和歌山モデルのように、早期かつ広範囲のPCR検査にこだわるのが東京都世田谷区だ。保坂展人区長は、現在200~300件という同区における1日あたりの検査数を10倍に引き上げ、「いつでも誰でも何度でも検査できる体制」づくりを目指す。
「『世田谷モデル』には、PCR検査の大幅拡充に加え、医療、介護、保育などに従事するエッセンシャルワーカーの重点的な検査や、接触確認アプリ『COCOA』の導入といった重要な試みがいくつもあって注目されます」(一石さん)
感染者数が長らくゼロだった岩手は、東日本大震災時の感染症対策の経験をもとに、2012年に「いわて感染制御支援チーム」を設置。そのチームは新型コロナが全国に広がって以降、医療従事者向けの講習や訓練を行って「現場力」を高めることで、感染者ゼロという「岩手の奇跡」に貢献した。
「そうした常設チームがあれば、感染が急拡大して隔離が必要になった際や、避難所での感染蔓延などにも即時対応できます」(一石さん)
一方、地方になるほど情報格差が生まれる場合がある。
「例えば、沖縄の先島諸島では、宮古島の保健所と八重山管内の出先機関で情報開示の仕方が食い違い、情報がなかなかオープンにならなかったことに、島民が当惑したと報じられました。特に離島部では情報が分断されがちで、そうした情報系統の混乱は地域の対策に目詰まりを生じさせ、患者の対応が遅れて重症化しやすくなります」(一石さん)
鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長は7月4日、同市在住者で初となる感染者が確認されたものの、県からの情報が滞っていたとして「情報がなければ、現場を担当する首長として決断も難しくなる」と苦言を呈した。
※女性セブン2020年9月10日号