コロナの時代にヒットする番組とは何か。「癖が強くても、見たら裏切らない」(テレビ東京プロデューサー・伊藤隆行氏)という指摘がありますが、たしかにこのドラマも、クセはあるけれど見始めると止まらない。視聴率は高くないけれど話題性に溢れています。
ただ一つだけ残念なのは、主人公やその女友達の設定をあまりにも落としすぎた点。「バカな男に二股かけられ気付かず、捨てられた」「仕事をエサに近づいてきた詐欺男に、襲われそうになる」「婚活詐欺師に騙され大金をとられそうに」といったエピソードが続く。今どきそこまでバカな女っているのかな、と思うほどに。
普通に生きていたって日々の中にさまざまなドラマがあり葛藤があるはずです。例えば、人気のドラマ『私の家政夫ナギサさん』の主人公・相原メイを見ると、家事は苦手で仕事は得意な普通の人。そのメイが多くの視聴者の共感を集めているこのご時世ですから、澪という主人公ももっと普通でいいのかもしれません。
うがった見方をすれば、主人公が「お古い」設定なのは過去の妖怪たちのエピソードを反映させながら話を進めていくせいなのでしょう。たしかに四谷怪談も番町皿屋敷も、昔の女性たちは「悲劇の人」「不条理の被害者」でしたから。
とにかく、凝った作りと遊び心が魅力的なこのドラマ。願わくば毎夏放送される定番シリーズになって、成長していく主人公が新たな出来事に出会っては格闘し、妖怪とともに力を合わせて解決策を探っていくチャレンジングな展開をぜひ見てみたいと思います。