中国の最高指導者、習近平国家主席が今年7月の豪雨による洪水で大きな被害にあった内陸部の安徽省阜陽市の農村部を視察し、被災した主婦と娘を慰問したとの報道が大々的に伝えられた。しかし、その被災者は当局が用意した偽者で、実際には被害には遭っておらず、地元警察の治安大隊の女性副隊長とその娘だった。新聞で写真を見た市民が女性副隊長と面識があり、ネット上に投稿したことで「フェイク情報」だったことが明らかにされたのだ。
ネット上では、「習近平国家主席を巻き込んだ詐欺事件」「習氏の受けをよくしようとした地元政府の役人が仕組んだ三文芝居」などとのコメントが書き込まれている。米政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
習氏は8月中旬、洪水被害を受けた阜陽市阜南県の洪水被害地域を訪問し、河川洪水のための仮設の避難施設に住む被災者を慰問。地元の県政府幹部や被災家族らとも面会し、激励した。この模様は新聞やテレビのほか、ネットでも大々的に報じられた。
その被災者として、小さい娘を両手で抱いて、笑顔で習氏と対面している女性について、ある市民が「この女性の本当の身分は阜南県警察署の治安大隊副隊長だ。少女を抱いて、被災者として懸命に演技している」と書き込んだ。
この市民は、警察主催の行事があった際、この女性副隊長が演壇に立って説明している姿を撮影したことから彼女の顔を覚えていたという。このため、スマホで撮影した写真をチェックし、間違いないと確信。習氏とにこやかに会話している報道写真と、警察の制服姿で講演している彼女の写真の2枚を並べ、「懸命に演技している副隊長と少女」とのキャプションをつけてネットに投稿したのだ。