かつて官邸の医務官を経験したことがあるベテラン内科医は、「総理の主治医」の役割の特殊さがあると語る。
「総理の主治医の役割は我々が一般の患者を診る場合と違います。極論すれば、国の危機管理の一翼を担わされるわけです。総理の健康悪化は政情不安にも安全保障にも直結する。特に安倍首相のように難病の持病がある場合、医師団は総理が心身共に正常な状態で執務できるように病状をコントロールすることが重要な役目になる。
一般の患者であれば、体調回復を最優先に考えて『1、2週間程度は会社を休みなさい』と指導するところでも、今のコロナ危機のように政治的に重要な局面であれば、薬などで病状を誤魔化しながら、総理が“なんとか執務できるようにすること”を求められる場面も多い」
いわば、患者としての総理の命を優先するか、国家を運営する総理の務めを優先させるか、医師としてのジレンマがギリギリまでつきまとっていた、という指摘だ。
※週刊ポスト2020年9月11日号