若い世代の息苦しさを汲む役目
脳そのものには器質的な性差はないという事実を誰よりも知る医師たちが、性差を盾に差別する/されるのは矛盾以外の何ものでもない。まして、建前は平等でも、取り巻く環境に少しでも差別があれば、何かにチャレンジしようという気力そのものも削がれる。
もっとも、女性医師差別は医療界だけの問題ではない。「女性医師の方が男性医師よりも患者の死亡率や再入院率が低い」という論文が世界でいくつも出ているにもかかわらず、担当医が女性だと「頼りない」「不安だ」という意識は、患者側にもいまだに残る。
「そんな世の中での解決ってなんだろうなと。一足飛びに社会が変わることは考えられないから、ならば女性側が生き方そのものを見直すことで活路を見出す、明るいエンディングを目指そうとは考えました」
その4人をつなぐのが、恩師の城之内教授と、世界で初めて公的に医師として認められた女性、エリザベス・ブラックウェルだ。
「ブラックウェルについては、実は私もあまりよく知らなかったんですね。編集さんからもらったヒントです。日本で最初に国家資格を持った女性医師には、荻野吟子さんがいます。そうした女性医師の先駆者たちが縦軸になり、テーマのひとつである女性たちの闘いが、よりくっきりと描けた気がします」
城之内教授は、常に学生を男女の別なくフェアに扱うことに必死だった事実が、それぞれの回想の中で描かれる。片や、何か負い目でもあるかのように、仁美たち4人に目をかけてもいた。それはなぜなのか。もやもやした謎が、最終章の城之内の語りの中で明かされるカタルシス。