「日本のドキュメンタリーは“初めに答えありき”的な作りになりがちですが、ネットフリックスは徹底的に主観を排し、どう感じるかは視聴者に委ねるというスタイルを貫いている。おすすめは、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツの人物像に迫る『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』。映画『不都合な真実』でアカデミー賞を受賞したデイビス・グッゲンハイムが監督を務めています。
トランプが大統領に上り詰めるまでの軌跡を側近の証言を元に辿る『トランプ:アメリカン・ドリーム』、元NBAスターのマイケル・ジョーダンの栄光を振り返る『ラストダンス』も見応えがある」(同前)
先の大戦に関するドキュメンタリーも充実しており、戦闘機P-47の空中戦を記録した『サンダーボルト』、日米海軍がぶつかった『ミッドウエイ海戦』、ナチス・ドイツ軍の戦争犯罪を検証する『ナチスの強制収容所』など、「その作品群からは歴史の真実に向き合う姿勢が見える」(同前)。
野呂氏によれば、女性向けに思われがちな作品にも良作は多く、『愛の不時着』についてもこう評する。
「非常によくできているドラマだと感じます。これまでの韓流ドラマや映画と違い、北朝鮮の生活描写にリアリティがあるんです。夜は電気が消えてしまったり、若者が韓流ドラマにひっそりと憧れをもっていたり、北で暮らす人々の“体温”が感じられる。シニア男性でもハマっている人は多く、試しに1話見たら止まらなくなり、気付いたら朝になっていたという声はよく聞きます」
残暑厳しいこの季節も秋の夜長も、家の中で思う存分「ネットフリックス生活」を試すのもアリかもしれない。
※週刊ポスト2020年9月11日号