車高にゆとりのあるクロスオーバーSUVが世界的に人気を博すのと対照的に、退勢を余儀なくされている4ドアセダン。不調なのはセダンばかりでなく、ハッチバック、ステーションワゴンと、背の低いクルマが軒並み販売不振に陥っているが、長きにわたって乗用車の基本形とされてきたセダンの復権はこの先も見込めないのか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。
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かつて日本の軽自動車界でスズキが背の高い「ワゴンR」を出したところ、あっという間にスペースを稼ぐための高さ競争が始まり、軽セダン(ハッチバック)がわき役に追いやられたことがあった。今のSUVブームはそのムーブメントの世界版とも言える。
低車高の乗用車よりスペースを稼ぎやすく、立派に見え、最低地上高にゆとりがあるため悪路や雪道でも有利。1ボックスバンタイプのボディを好まない欧米のユーザーにはその商品性がとりわけ刺さり、一大ブームを形成。それが世界に波及した──というのが現在の状況である。
そのSUVに押され、フォードが撤退を表明したのをはじめ、各社がセダンのラインナップを縮小するという傾向は加速する一方。数自体はまだ出ているが、人気の低下に伴ってモデルの利益率が落ちているためだ。
果たしてセダンはクルマとしてそんなにも魅力薄になってしまったのか。筆者はセダンの中でも最大のボリュームゾーンとなっている欧州Dセグメント相当(全長おおむね4.7~4.9m)のセダンで幾度か長距離ドライブを試している。その印象は、セダンとSUVの美点は異なる部分にあり、セダンにも魅力は依然としてある。ライフスタイルや技術トレンドの変化、気候変動に伴う環境性能要求次第で、未来永劫セダンは廃れると決まったわけではない──ということだ。