「パサート」は荒れ放題の路面でも滑らかな動き
パサートはアコードと同様、日本でのドライブ。総走行距離は3800km。パサートで出色だったのはタフな足腰だ。ドライブの途中、京都北方から丹波高地、中国山地の奥部を山口県まで延々縦貫するルートを通ってみた。その間すべて一般道で、盆地や川沿い以外はほとんどワインディングロードで、しかも多くの区間で路面は荒れ放題というとんでもないコンディションだった。
このクルマなら大丈夫という確信を持って走り始めたわけではない。そもそも国道429号線をはじめとするこの地域の道路がここまで険路だらけだと知らずに踏み込んだのだが、結果から言えば乗っていたのがパサートで本当によかったとクルマに感謝したくなるような走りの良さだった。
コーナリングでのクルマの動きがねっとりと油圧的で、たとえばS字カーブでクルマの姿勢が右ロールから左ロールへと激しく切り替わるときもガクッという不連続な動きがほぼゼロ。スキーで言えば、ターンをザザッと雪を吹き飛ばすことなく右、左とスムーズにこなすような感じだった。もともとフォルクスワーゲンはそういう動きを作るのが世界的にみても上手いメーカーなのだが、この滑らかな動きは低重心ボディでなければさすがに作れないであろうと思われた。
このように三者三様の良さがむんむんに感じられたDセグメントセダンたちだったが、これらに共通して足りないものもあった。それは安全装備を満載するなどの時代の要請もあって、今や決してお安くはない価格帯となったにもかかわらず、その出費をユーザーに納得させるような特別感だ。
ブームに乗っているSUVは、本来はワイルドな車型のエクステリアを滑らかに作ったり、インテリアを上等そうに仕立てたりするなど、ちょっとした工夫がユーザーからプラス評価を受けやすい。が、見慣れたセダンはちょっとやそっと良く作ったからといって、ユーザーからは当たり前と思われてしまう。「近年は市場を問わず、セダンは年金暮らしの高齢者が乗るものという印象を持たれてしまっている」(大手自動車メーカー幹部)ため、なおさらイメージを上げるのは難しい。