国内

ミスコンは過去の遺物か 高学歴女子にとってはメリットも

ミスキャンパス神戸2020公式ホームページより

 多様性は時代を決定づけるもっとも重要なテーマの一つ、ならばミスコンの類はどう捉えていくべきか。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察した。

 * * *
 およそ一か月前に存在を知った一つのツイートが、いまだ気になっている。神戸大学医学部医学科4年生の中島梨沙さんが8月17日に投稿した文章。中島さんは、「ミスキャンパス神戸2020」(オンライン開催)のファイナリストである。そのコンテストの投票中に、彼女はなんとも正直に心の内を明かした。

〈賢い女の子は好かれないと思いこんで、中高では自分の成績をわりと隠してきたし、大学入学後も初対面の人に医学部ですって言うのが少し嫌だった。でもこのミスコンで、“頭がいいなんてすごいです”って前向きに応援してくれる人が多くて、本当に嬉しい! 女の子がバカを演じなくていい世界線って最高!〉

 ツイートはちょっとバズって、原稿執筆現在で1218リツイート、1.3万いいね、だ。リプライもたくさんついており、そのうちの〈そんな悩みを抱えてたんやな、、これからは堂々と胸張って楽しくいきましょう!〉という返信に、中島さんはこう応えている。

〈悩みというか、固定概念でしたね。ありがとうございます!〉

 というならば、バズッたツイートの内容は、そういう固定概念に縛られていた中島さん個人の問題にすぎないということだろうか。否、そうではあるまい。今でも東大をはじめとした超のつく難関大の女子学生が、初対面の人に自分の大学名や学部名を言いづらいというのは、しばしば聞く話だ。ありのまま言ってしまうと、相手に引かれてしまうからだ。

 その「相手」というのは、もちろん男子学生である。そして、男子学生たちにこうした話を振ってみると、多くは「たしかにちょっと、そう思っちゃうところがあるかもしれませんね」といったような返答をする。

 中には、「恋人は、本音ベースだと、やっぱ自分の大学より下のところの子のほうに目が行きますよ」とはっきり言う者もいる。実際、自分の大学より「下」の女子大学生しか入れないお遊び系のインカレサークルは、難関大の中に今でもわりと普通に実在する。

 なんなんだろう、この時間が止まった感じは。時代は21世紀どころか、令和になったというのに、これじゃ、昭和の男根中心主義からちっとも前進していないじゃないか。世間一般はもっと男女平等社会に近づいているはずなのだが、現実をミクロで見ると、それはタテマエにすぎないということか。

 話を中島さんのツイートに戻そう。彼女は、〈女の子がバカを演じなくていい世界線〉で生きることができる喜びを、図らずもミスコンに参加することで知った。

 これは実に皮肉な話である。

 ミスコンは、関東では東大、慶應、立教、学習院、成蹊、明治学院、東洋、駒沢など、関西では同志社、立命館、関西学院、関西大学など、多くの大学でいまでも催されている。ジェンダー教育が盛んなお茶の水女子、日本女子、東京女子大学でも開かれていたりする。

 つまり今でも、十分にメジャーな大学イベントなのだが、一方で昔のフェミニズム運動とはちょっと違った形での批判も、このところ強まっている。その流れについて、教育ジャーナリストの小林哲夫氏は、近著『女子学生はどう闘ってきたのか』(サイゾー刊)でこう説明している。

〈大学のミスコンに対しては、1970年代から90年代まで「外見で判断するのは女性差別」という批判が強くあった。

 2000年代に入ってから、大学は多様性を尊重するという考え方が広がっている。女性だけでなく、性的少数者、年齢、国籍、人種、民族などによる違いで差別してはいけない、すべて尊重すべきである、という考え方だ。いま、多くの大学で教育理念や目標としてダイバーシティ(多様化)を掲げている。また、差別されることなく人権を尊重する、という姿勢を明確に示している。

 こうした観点から、ミスコン批判が展開されるようになった。〉

 多様性の尊重。その観点からの批判で、最初にミスコン開催を中止にしたのは、2011年の国際基督教大だったとのこと。〈学生、常勤・非常勤の教員や職員、卒業生、近所の住民、出入り業者など、様々な立場でICUに関わり、関心をもって〉いる有志の人々が「ICUのミスコン企画に反対する会」を立ち上げた。

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト