人間の歌声が、気づけば機械の音声のようにも聴こえる「夜に駆ける」という楽曲について、著書『廃墟で歌う天使』(現代書館)でボーカロイド・初音ミクにいたる“歌うロボット”の系譜を哲学的な知見を踏まえて考察した学習院大学教授・遠藤薫氏は、次のように分析する。

「YOASOBIは、ボーカロイドプロデューサーとシンガーソングライターのユニットです。それは彼らの楽曲が機械と人間の相互に融合する境界領域にあることを暗示しています。とくに代表曲『夜に駆ける』では、物語の二人が夜へとダイブする結末に至りますが、その先は〈死〉ではなく、〈モノ〉たちの世界ではないでしょうか。〈モノ〉とは、ヒト=者(もの)であり、キカイ=物(もの)であり、情報=霊(もの)であり、それらが渾然一体となった何かです。

 彼らは人間から〈モノ〉へと変化(へんげ)することで世界そのものとなります。サビで歌声が機械音声(ボカロ)化していくのはその変容のプロセスを表現しています。それはいま、DX(デジタル・トランスフォーメーション)のなかで、すべての人間たちが〈モノ〉(デジタルマシン)化——ポストヒューマン化していくリアリティと同期します。駆けていく先にあるのは、安らぎなのか、恐怖なのか、新生なのか」

 インターネットが普及し、多くの人々がスマートフォンを片手に容易に情報を取得できるようになった昨今。高度にデジタル化された領域は、もはや仕事や生活における環境の一部として身の回りを覆い尽くすように存在している。YOASOBIが多くのリスナーを惹きつけるのは、彼らの音楽がこうした同時代のリアリティと深いところで響き合っているからなのかもしれない。

●取材・文/細田成嗣(HEW)

関連記事

トピックス

『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(HP/時事通信フォト)
「私嫌われてる?」3年間離婚を隠し通した元アイドルの穴井夕子、破局後も元夫のプロゴルファーとの“円満”をアピールし続けた理由
NEWSポストセブン
小野田紀美・参議院議員(HPより)
《片山さつきおそろスーツ入閣》「金もリアルな男にも興味なし」“2次元”愛する小野田紀美経済安保相の“数少ない落とし穴”とは「推しはアンジェリークのオスカー」
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン
記者会見を終え、財務省の個人向け国債のイメージキャラクター「個子ちゃん」の人形を手に撮影に応じる片山さつき財務相(時事通信フォト)
《つけまも愛用》「アンチエイジングは政治家のポリシー」と語る片山さつき財務大臣はなぜ数十年も「聖子ちゃんカット」を続けるのか 臨床心理士が指摘する政治家としてのデメリット
NEWSポストセブン
森下千里衆院議員(時事通信フォト)
「濡れ髪にタオルを巻いて…」森下千里氏が新人候補時代に披露した“入浴施設ですっぴん!”の衝撃【環境大臣政務官に就任】
NEWSポストセブン
aespaのジゼルが着用したドレスに批判が殺到した(時事通信フォト)
aespa・ジゼルの“チラ見え黒ドレス”に「不適切なのでは?」の声が集まる 韓国・乳がん啓発のイベント主催者が“チャリティ装ったセレブパーティー”批判受け謝罪
NEWSポストセブン
高橋藍の帰国を待ち侘びた人は多い(左は共同通信、右は河北のインスタグラムより)
《イタリアから帰ってこなければ…》高橋藍の“帰国直後”にセクシー女優・河北彩伽が予告していた「バレープレイ動画」、uka.との「本命交際」報道も
NEWSポストセブン
歓喜の美酒に酔った真美子さんと大谷
《帰りは妻の運転で》大谷翔平、歴史に名を刻んだリーグ優勝の夜 夫人会メンバーがVIPルームでシャンパングラスを傾ける中、真美子さんは「運転があるので」と飲まず 
女性セブン
安達祐実と元夫でカメラマンの桑島智輝氏
《ばっちりメイクで元夫のカメラマンと…》安達祐実が新恋人とのデート前日に訪れた「2人きりのランチ」“ビジュ爆デニムコーデ”の親密距離感
NEWSポストセブン
イベントの“ドタキャン”が続いている米倉涼子
「押収されたブツを指さして撮影に応じ…」「ゲッソリと痩せて取り調べに通う日々」米倉涼子に“マトリがガサ入れ”報道、ドタキャン連発「空白の2か月」の真相
NEWSポストセブン
元従業員が、ガールズバーの”独特ルール”を明かした(左・飲食店紹介サイトより)
《大きい瞳で上目遣い…ガルバ写真入手》「『ブスでなにもできないくせに』と…」“美人ガルバ店員”田野和彩容疑者(21)の“陰湿イジメ”と”オラオラ営業
NEWSポストセブン