トランプ氏の支持派vs反対派の対立は日に日に激化している(時事)

 このタイミングで大統領選挙が行われることは不幸でしかない。右派、左派のリーダーたちが、融和をうながすどころか、むしろ対立を先鋭化させているからである。

 共和党とトランプ大統領は「法と秩序」を強調し、全米で起きている暴動には強く対処し、厳罰に処するべきだと訴える。デモに参加している人たちを「社会主義者、共産主義者」などと批判し、「無政府主義者」とさえ呼んでいるのである。特に、自ら社会主義者だと公言する民主党のバーニー・サンダース氏と、その支持者である若者たちを標的とし、その支援を受けて大統領選挙を戦っているバイデン氏を排斥しようと狙っている。日本の読者のために補足すると、アメリカで「社会主義」「共産主義」という言葉は、東西冷戦が終わって30年経つ現在でも、「敵の思想」「忌み嫌うべき間違った考え」というイメージを持つ国民が圧倒的に多い。アメリカが国是としてきた「自由主義」や「民主主義」の対義語のように使われることが多いのである。サンダース氏が社会主義者を自称したのは、少なくとも選挙のためには勇み足だったと言わざるを得ない。

 一方のバイデン陣営も、トランプ氏の人種差別的な発言や、警官による暴力を擁護するような態度を厳しく非難し、結果としてデモを煽る役を演じている。これでは対立も暴動も収まるはずはない。

 トランプ氏は、コロナ危機を過小評価し、その恐ろしさを公表しなかったことを暴露本で明らかにされて、ますます窮地に陥っている。20万人に迫る死者のなかでは黒人の割合が高い。この問題も左派やマイノリティの怒りを増幅させるだろう。

 9月末から始まるテレビ討論では、トランプ氏はこれまで以上に激しくバイデン氏を攻撃するはずだ。決して自分の間違いを認めず、言葉を極めてバイデン叩きを徹底する戦略が予想される。バイデン氏がこれに応戦すれば、国を真っ二つにする内戦状態が加速する。アメリカの歴史で唯一、本土が戦場になったのが南北戦争だった。黒人奴隷の是非が対立の根幹であったが、150年以上の時を経て、再び人種差別問題でアメリカは内戦に突入しようとしているのだろうか。人種問題が古典的階級闘争と深く絡んでいることもまた、150年前と何も変わっていないのである。

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