連帯感が強いとされる開成卒の顔ぶれをみると、安倍官邸で内閣情報官、そして国家安全保障局長を務めた北村滋氏や武藤敏郎・元大蔵次官(現・東京五輪組織委事務総長)ら大物官僚のOBが多い。開成学園の現理事長を務めるのも丹呉泰健・元財務次官だ。その一方、政治家の数は決して多くない。
「開成は猪突猛進のガリ勉タイプが多いので政治家よりも官僚として実績を残す人が多いのではないか。対照的なのが麻布で、地道にコツコツと積み重ねることは苦手だけど、奔放で発信力のあるタイプが目立つ。政治家に向いているのだと思う」(麻布OBの永田町関係者)
たしかに政界の麻布OBに目を向けると、橋本氏、福田氏という総理大臣経験者以外にも松野頼三・元農林相、平沼赳夫・元経産相、与謝野馨・元官房長官、谷垣禎一・元自民党総裁、丹羽雄哉・元厚生相、中川雅治・元環境相、鈴木俊一・元環境相、中川昭一・元財務相ら閣僚経験者を数多く輩出している。麻布出身の政治家を支援する「麻立会(まりゅうかい)」というOB組織もある。
政・官・ビジネス界で異彩を放つ麻布卒業生たちに幅広く取材し、新著『麻布という不治の病 めんどくさい超進学校』(小学館新書、10月1日発売)をまとめた教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏はこういう。
「麻布卒業生に政治家が多いといっても、ひとくくりにはできないでしょう。与謝野氏や谷垣氏が自民党内でもリベラルな立場だったのに対し、平沼氏や中川昭一氏は右派的な立ち位置が鮮明でした。同じ高校だからといって、全員がつるんでいるとはいえません。ただ、派閥のなかでの人間関係が基本となる自民党において、同じ高校の先輩・後輩の関係があることで派閥を超えての相談がしやすいといったことはあるそうです」