たとえば、こんなシーンにそれが見て取れる。1作目13話で、夫・宏(古谷一行)が親友である英子(小川知子)と浮気をしていたのを知り、ショックを受けて家を出た妻・久子(いしだあゆみ)が、迎えに行きたいと電話で告げる宏に対し、
《私は、子供たちのためとか、家庭のためとか、そんなことであなたと一緒にいたんじゃないんです。あなたと一緒に暮らしたかったから。それ以外のことは、何も関係ないんです。だから宏も、本当に私と一緒に暮らしたいかどうか。それだけ考えて》
と訴える。当時はまだ、結婚した女性は妻となり母となって、家族や子供のために生きるという価値観が当たり前だった。そんな時代にあって、夫婦であろうと“女である一個人の私”を求めるように迫るシーンは、相当新しかったはずだ。何せ、37年経ったいま見ても、ハッとさせられるからだ。
「当時の女性には、いい嫁、いい母など、縛られるものがいっぱいあったんです。でも、それをはねのけないと、これからの世の中で生きていけないし、本来の自分になれない。本当の意味での幸せを女性につかんでほしい。そう思ったんです」
【作品紹介】
『金曜日の妻たちへ』
1983年に放送。東京郊外に住む3組の夫婦の友情、恋、家庭問題などを描く。舞台になった東急田園都市線のたまプラーザ駅はドラマの効果で人気の駅に。出演/古谷一行、いしだあゆみ、竜雷太、小川知子、泉谷しげる、佐藤友美ほか
『金曜日の妻たちへII 男たちよ、元気かい?』
1984年放送。東京郊外の中央林間に4組の夫婦が引っ越してくる。その中には、かつて恋人同士だったふたりが……。近所づきあいや嫁姑問題などもリアルに描かれ話題に。出演/小西博之、高橋惠子、伊武雅刀、竜雷太、田中好子、板東英二、篠ひろ子ほか
『金曜日の妻たちへIII 恋におちて』
1985年放送。宮城県・仙台のお嬢様学校で同級生だった4人の女性の友情と恋愛が描かれる。小林明子が歌う主題歌『恋におちて -Fall in love-』も大ヒット。出演/古谷一行、いしだあゆみ、小川知子、奥田瑛二、森山良子、板東英二、篠ひろ子ほか
※女性セブン2020年10月8日号