同級生には竹槍を持って学生運動をやっている連中もたくさんいたが、亀田さんはビリヤードのキューを持ち、ホテルのプールサイドで夜な夜な女性を口説いていたというわけだ。石原裕次郎主演の映画で描かれた「太陽族」を地で行く青春だった。

「時代背景もあって、麻布のスノビズムみたいなものが我々のときにはだいぶエスカレートしていた。普通に考えたら、生意気ですよね。でも、いまの世の中を見ててね、本当にみんなかわいそうだと思う。ちょっと何かするとすぐネットに書かれちゃうからね。我々の若いころのハチャメチャから比べたらいまの不良なんかかわいいもんなのに」

 世間一般にもたれているちょっと小生意気な「麻布生」のイメージはこのあたりに原型があるのではないかと思えてくる。

「あいつはこういう癖があるやつだよな、あいつはケチなやつだよな、あいつはひとの顔見てゴマばっかりすってるよな、なんてお互いに言ってんだけど、お互いに笑って許される。多様なひとが多様なままでいられる学校だよね。私にとって麻布とは小宇宙なんですよね。自分がその中にいるんだか、外からそれを見ているんだかわからないんだけれど。『麻布とは何か?』ってよりも、麻布っていうのは自分の身体の一部みたいな感覚なんだ」

 学園紛争があったからこそ最大限の余白の中で亀田さんの奔放な性格がのびのび育ち、こうして豪快な花を咲かせたのかもしれない。巨大な亀田メディカルセンターを振り返りながら、そう思った。

【話者略歴】亀田隆明(かめだ・たかあき)/心臓外科医、病院経営者。1952年8月28日千葉県生まれ。1971年麻布高校卒業、1978年日本医科大学医学部卒業、1983年順天堂大学医学部胸部外科大学院卒業・医学博士号授与。同年亀田総合病院心臓血管外科勤務。2004~2008年東京医科歯科大学理事。2008年医療法人鉄蕉会理事長就任。

◆取材・文/おおたとしまさ(教育ジャーナリスト)
『麻布という不治の病』(小学館新書)より抜粋

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