早弁の成功記憶が人生のビジネスモデル

 ウォール街と麻布は似ている?

「まったく種類が違うから比較は難しいのですが、麻布を知ってからウォール街に行ったほうが楽しめると思います。その逆じゃなくて」

 というと?

「麻布に行ってからウォール街に行くとウォール街のシステムが手に取るようにわかる。つまりウォール街の想像すら超えているところに麻布がある。麻布のほうがめちゃくちゃ。だって、先生が『どうせ君たちは宿題しないんだろう』と言って、生徒たちも誰一人裏切らない。要するにボールを投げても誰一人跳ね返さないという信頼。そんな負の信頼関係で結ばれている組織はなかなかないですよね。個々がバラバラすぎて、結果的に見事に統一がとれているという」

 バラバラすぎてまとまってしまうという逆説的な麻布生の性……。

「麻布って、あとで考えると正しいことを教えてくれたんだなと思います。卒業して30年くらい経つとわかると思いますよ」

 30年経ってわかったこととは?

「うーん……。2時間目のあとの休み時間に食う早弁ほどうまいもんはない、ということ!」

 え?

「2時間目の早弁の成功記憶が私の人生のビジネスモデルそのもので。まわりを気にせずガツガツ食って、吸収して、でも誰もチクるやつなんていなくて。むしろ友達と食うからうまいんです。誰も“いい子”にならない。だからそれが、お互いに命を託すということでもあって」

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