第三話では悲劇のヒロイン願望を持つ女子高生として森七菜(19)が登場。幼なじみの山里(仲野太賀)を相手に、なんとか自分を悲しい設定へ持って行こうとくだらない努力を重ねる姿が可愛らしかった。

 全編が山里の妄想と言っても決して卑猥なものではなく、どこか青春の甘酸っぱい雰囲気がドラマから伝わってくる。山ちゃんが真剣に筆と向き合って、妄想をしたためた結果がちょっとしたファンタジーということか。大人が真剣に遊びにかかってくると、ものすごく楽しい要素が生まれるのだと改めて考えさせられた。

山里のいい男っぷりがさらにジャンプアップ

 ドラマには作者である山ちゃんも必ず登場してくる。見事な再現性で作品に深みを与えているのが、山ちゃん役の仲野太賀(27)だ。イケメン臭をしれっと消して、完全にモテないキャラを演じている。山ちゃん本人が愛用している赤縁のメガネを人差し指で正す仕草、話し方の抑揚など細部まで仲野が研究している様子が伺えるのだ。これもドラマ内でぜひ注目してほしいところ。

 ただ私がこの作品で改めて思ったのは、悔しいことに山里亮太の魅力がまた増してしまったということ。そもそもモテないキャラでブレイクしたはずなのに、その水面下では小説家としても力を築いて、ネタを作って、レギュラー番組を着々と増やしてモテ要素をきちんと自分で操縦していた山ちゃん。

 昨年には人気女優との結婚も果たした。その時に『山ちゃんがイケるなら俺だって……』というツイートを見かけたけど、それは違う。彼は努力の結果、芸能界でも随一の稼げる芸人のポジションに鎮座しているのだから、その辺に転がっている男性とは比較にならないほど高スペック男性なのである。しかも金を持っているだけではなく、話したら面白いことは各テレビ番組で立証済み。

 そこに、新しい“書く”という力がドラマを通して披露されたのである。原作が映像化されるのは、一生のうちに幾度もあるチャンスではない。それをいくつもの顔を持つ、一人の芸人が叶えてしまった。私が言うのもおこがましい話だけど、山ちゃんのような才能の塊は少しおとなしくしていて欲しいと、ジェラシーを感じてしまう。でも彼のような人がいないと、面白い文化は継承されていかないのだということも知っている。

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