芸能

北野武が語る「コロナ時代の閉塞感」との向き合い方

北野武氏が「生き抜くヒント」を語った

北野武氏が「生き抜くヒント」を語った

 バラエティから映画、アート、小説に至るまで幅広い活躍を続ける北野武氏(73)。そんな彼にも、人知れず満たされぬ思いを抱える悶々とした青春時代があった。コロナ禍でいまだ先の見えない状況が続く中、北野氏が語る「閉塞感との向き合い方」とは──。

 * * *
 新型コロナウイルスの感染が拡がってから、どうも社会全体がどんよりした空気に包まれてしまっているね。

 そのせいか、不幸なニュースも続いている。国内の自殺者は7月から3か月連続で前年比増らしい。芸能界でも三浦春馬や竹内結子みたいな人気者が自ら命を絶ってしまった。

 竹内さんとは7年くらい前、松本清張原作のドラマ『黒い福音』で共演したんだ。俺が主演の刑事役で、彼女は宗教にのめり込む女性信者という難しい役だった。現場でも感じがよくて、気遣いのできるさっぱりした人だった。「芸能界にこんなスレていない女の子がいるんだな」と感心したよ。

 本当に惜しいことだし、世間が「こんなに綺麗で、幸せな家庭もあるのに何で……」って思うのは当然だ。だけど、忘れちゃいけないのは、それはあくまでも「客観的評価」だってことだよな。この人が、自分の仕事や生活をどう思っていたのかという「主観」の部分は結局誰にもわからない。ネットなんかじゃ「産後うつ」だとか推測されているらしいけど、人間の死ってのは、そんなに単純な理由で割り切れるもんじゃない。

 きっと色々と複雑な要素が積み重なってのことなんで、本人ですら「○○が理由だった」なんて、言葉で簡単に説明できやしないんじゃないかな。

 俺もバイク事故(1994年)で1回死んだようなもんだけど、あの時のことを振り返ろうとしても、正直よく思い出せない。なんでわざわざバイクに乗ったのかすらわからない。だけどその頃の俺が「何のために生きているのか」ってことばかり考えていたのは確かだ。

 仕事は成功してるし、カネだってジャンジャン稼いでるんだけど、まだ映画もゼンゼン評価されていない時期でね。誰に何を言われたわけじゃないけど、「もう才能終わってんのかな」と鬱々としてさ。「どうでもいいや」なんて投げやりな感じは、どこかにあったのかもしれない。

 俺自身、あれから30年近く経っても当時の自分の感情を把握しきれてないんだから、他人の死の理由を推し量ろうなんて無理な話だよ。

 ただひとつ言えるのは、日本の芸能界は「余生」が長くて大変だってことだ。早いうちにスターになっちまうと、そのときの勢いだとか熱量みたいなものを、その後も維持し続けるのは難しい。ちょっとでも油断すると「この先の人生、もう大したことはできないんじゃないか」という恐怖が心を支配し始める。まさにそんな不安が、バイク事故の頃の俺にあったんじゃないかという気がしている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
「山健組組長がヒットマンに」「ケーキ片手に発砲」「ラーメン店店主銃撃」公判がまったく進まない“重大事件の現在”《山口組分裂抗争終結後に残された謎》
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
財務省の「隠された不祥事リスト」を入手(時事通信フォト)
《スクープ公開》財務省「隠された不祥事リスト」入手 過去1年の間にも警察から遺失物を詐取しようとした大阪税関職員、神戸税関の職員はアワビを“密漁”、500万円貸付け受け「利益供与」で処分
週刊ポスト
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン