慌てたのは自民党。豊橋は岡崎と人口もほぼ同じ中核市。泡沫候補による“5万円逆転劇”の再現を恐れた自民党側は5万円給付に対する批判キャンペーンを展開、3人目の候補者で地元の共産党(共産党東三河地区委員会)の支援を受ける浅井由崇県議も批判に加わり、結局、鈴木候補は市長選の公開討論会(10月26日)の後、「5万円給付しか見てもらえず、他の政策が消えてしまっていた。違和感を覚え、取り下げる決断をした」と公約を撤回してしまう。
「豊橋(の市長選)は三つ巴で共産党が5万円の鈴木ではなく県議の浅井の支援に回った。そのねじれがあるから助かったが、岡崎のように現職と5万円候補の一騎討ちになると何が起こるかわからない。コロナの下で行われる今後の地方選でこんな手法がまかり通れば地方選は買収合戦になってしまう」(前出の自民ベテラン)
もっとも、国政で「税金を使った買収選挙」を推進しているのはその自民党だ。菅義偉・首相による解散が近いと見るや、10月14日には二階派の長島昭久、武部新、細野豪志各氏らが全国民に無条件での「5万円追加支給」を菅首相に申し入れた。公明党も受験生(高校3年生と浪人生)に2万円を支給する「受験生等支援給付金(仮称)」の新設を提案していたが、それを撤回して「もっと幅広い追加給付の提案を党内で検討している」(同党議員)という。Go To キャンペーンも似たようなものだ。第3次補正予算編成を前に、“有権者買収計画”が着々と進んでいる。
コロナが政界に、現ナマばら撒き政治を蔓延させ始めた。
取材・文/武冨薫(ジャーナリスト)