『麒麟がくる』」は長く謀反人といわれた明智光秀が正義感にあふれるまっすぐな男として描かれ、主家を乗っ取るなど悪行男とされる松永久秀(吉田鋼太郎)も世渡り上手のおもしろおじさんみたいで、これまで悪役らしい悪役がいないドラマだった。
そこへ出てきたのが「見るからにヒール」な晴門なのである。ちなみに鶴太郎は、「麒麟」と同じ池端俊作脚本の1991年の大河ドラマ『太平記』で、鎌倉幕府のダメ執権・北条高時役だった。この高時も鎌倉幕府の腐敗の象徴で、そのダメっぷり演技で鶴太郎は俳優として評価を高めたのであった。
これまでの晴門で最高だったのは、光秀の昔からの知り合いである三淵藤英(谷原章介)が、朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)の幼い嫡男の毒殺を仕組んだと晴門が言い出した場面。動揺する光秀にダメ押しのごとく「み・つ・ぶ・ち様ぞ~」と言い放つ。一語ずつ区切っていうセリフといえば、今年話題になった『半沢直樹』の大和田(香川照之)の「お・し・ま・いDEATH」を思い出す。大和田のダジャレ精神とは違うが、晴門もかなりのインパクト。ビビらせた将軍義昭も七年前の「半沢」第一作で涙目になっていた滝藤賢一だし、顔芸アップといい、バチバチにらみ合いといい、やっぱり悪役が出ると面白い。晴門が次に何をやってくれるか、どんな技を繰り出すのか。気になる。