マンハッタンは暴動に備えて厳戒態勢(時事)

マンハッタンは暴動に備えて厳戒態勢(時事)

 これも少し意外だった。ウォール・ストリートで上位5%に入る運用実績を誇る男だけに経済の行方を気にしていると思ったが、案に相違して社会の争乱を第一に心配していたからだ。これに対しては、筆者が「バイデン政権となれば、予備選を争ったサンダース上院議員のような左派からも重要ポストに就ける必要があるだろう。民主党が予備選で最後はバイデン氏に一本化したのは、左派を取り込む条件があったからだと推測される。政権全体を見れば、バイデン氏よりもっと左寄りの勢力が一定の力を持つことになる」と、M氏の懸念を先回りして指摘すると、最後は溜息まじりにバイデン氏に同情さえ見せた。

「彼の立場にはなりたくないものだ。政治家でもビジネスマンでも、自分のしたいことができない立場になるなら、引退するしかない」

 さて、M氏が肩を落とす通り、アメリカは今後、様々な試練を乗り越えなければならない。トランプ氏は、簡単には選挙の敗北を認めないだろう。来年1月に任期が切れるまで、法廷闘争を含めてありとあらゆる抵抗を続けるはずだ。日本をはじめ同盟諸国も対岸の火事を見物していることはできない。アメリカの報道などでは、トランプ氏は今後、様々なテーマで諸外国に圧力をかけ、国を混乱状態に陥れると指摘されているのである。仮想敵を拡大してカオスを生じさせる、いわば自爆テロ戦略である。それにより、仮にホワイトハウスを去ったとしても、自分の影響力を残そうとするだろうというわけだ。2024年に再びホワイトハウスを目指すという観測もある。

 ある大企業の元社長で、今はヘッジファンドを経営するA氏は、トランプ氏の極めて親しい友人として知られる。筆者とは、マンハッタンのレストランでよく政治談議をする仲である。トランプ氏が選挙で負けても日本を攻撃することがあるのだろうか。確かめなければならないので電話してみた。彼は、憎悪に燃えたトランプ氏は要注意だと示唆した。

「バイデンに対する復讐はするだろう。共和党にも圧力をかけ、徹底的に抵抗させる。彼は、いったん自分の敵だとみると、とことん戦い続ける性格だ。トランプ氏は、日本がもっと防衛費を使い、アメリカの負担を減らして自ら軍備を増強すべきだと考えている」

 これまでの仮想敵は、民主党や中国、EUだったが、「みんな敵だ」という心理状態になれば、日本を含めて四方八方に刃を向ける可能性があるということか。菅義偉・首相は、少なくともあと2か月はアメリカ大統領の座にあるトランプ氏と、まず「お友達」になっておく必要があるかもしれない。

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン