国内

菅首相、野党時代に686万円かけて著書を自費出版した思惑

政治資金で自費出版するケースは珍しいという

政治資金で自費出版するケースは珍しいという

 今年10月20日に出版された菅義偉・首相の著書『政治家の覚悟』(文藝春秋)はいきなり「新書1位」(トーハン)になるなど、ベストセラーになっている。

 同書は、菅氏が8年前に出版した単行本『政治家の覚悟 官僚を動かせ』(2012年3月10日発行)に、官房長官時代のインタビューを追加収録して新書版で再出版した。

 8年前の単行本の発行元は文藝春秋の自費出版部門「文藝春秋企画出版部」である。つまり、菅義偉氏自身が出版社に費用を拠出して出版したのだ。では、出版された単行本の「自費」の財源は何だったのか。

 総務省や都道府県に提出される政治資金収支報告書の保存期間は、政治資金規正法で3年間と定められている。それ以前の政治資金を調査しようにも、“封印”されており閲覧できない。そこで本誌は政治資金を監視するために有力政治家の報告書を独自に保存している「公益財団法人・政治資金センター」の協力を得て、当時の菅氏の報告書を入手した。

 菅氏の資金管理団体「横浜政経懇話会」と政党支部(自民党神奈川県第2選挙区支部)の報告書に、「自費出版の費用」と見られる支出記録があった。最初は横浜政経懇話会から単行本出版前年の2011年9月に「書籍制作費」として文藝春秋へ支払われた約220万円。翌2012年には「販売委託口座開設料」として42万円、「広告料」として76万円が支出されていた。

 政党支部の報告書にも「書籍制作費」の支払い記録があり、単行本出版翌月の2012年4月に約76万円、約195万円、約78万円の3口に分けて支出されており、資金管理団体分を合わせると、文藝春秋に支払った自費出版関連費用は総額約686万円にのぼる。

 一方で、書籍を販売した収入も、それぞれの団体の収支報告書に記載されていた。両団体の「書籍販売収入」は合計401万円。単純に収支を見ると、菅氏の“自費出版事業”は約285万円の赤字だった。

 支持者の献金や、一部に税金(政党交付金)が入っている政治資金で本を制作し、売ることに疑問を覚える向きもあるかもしれない。ただし、政治資金で自著を出版したり購入したりすることは違法ではない。実は、政治家が選挙前などに著書を商業出版し、それを政治資金で買い取ったうえで政治資金パーティの参加者に「お土産」として渡すことはしばしばある。

関連記事

トピックス

愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン