芸能

柳家さん喬 寄席ネタからメルヘン、芝居噺まで味わう贅沢

柳家さん喬の濃厚な独演会を堪能(イラスト/三遊亭兼好)

柳家さん喬の濃厚な独演会を堪能(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、4席みっちり語る濃厚な独演会を開いた柳家さん喬の百花繚乱な充実ぶりについてお届けする。

 * * *
 年に一度、よみうり大手町ホールで開かれる「ザ・柳家さん喬」。4席みっちり語る濃厚な独演会だ。今年はコロナ禍で6月6日から9月30日に延期となり、定員を半数以下にして開催。動画も有料配信された。

 まず寄席サイズの『浮世床』を演じた後、高座を降りずに2席目『木乃伊取り』へ。無骨な田舎者の清蔵が吉原の座敷の派手な雰囲気に呑まれ、相方の花魁にメロメロになっていく様子を楽しく描いた。

 3席目は『鴻池の犬』。上方のネタを江戸に移したもので、さん喬はこれを独自の演出で丁寧に磨き上げ、人情噺風の十八番としている。

 江戸の乾物屋の店先に捨てられていた黒、白、ブチの子犬。小僧が主人に頼んで飼うことになったが、長兄のクロが大坂の豪商・鴻池善右衛門に引き取られていく。次兄のブチも大八車に轢かれて亡くなり、小僧に邪険にされるようになったシロは、大坂のクロの許へと旅に出る。

 道がわからず困っていたシロだが、伊勢参りの旅をするハチという犬と出会う。ここからのロードムービー風の展開はさん喬ならでは。楽しい道中も、やがて大坂方面と伊勢方面の分岐点へ。別れがたいシロとハチ。寂しそうに「お別れか?」と繰り返すシロ、「また会えるさ。兄ちゃんに会えるといいな!」と励ますハチ。ウルッと来る場面だ。

 通常の独演会ならこの3席でお開きだろうが、この会ではさらに大ネタが続く。『中村仲蔵』だ。

 仲蔵の師匠である中村傳九郎が後に勘三郎を襲名する名優であること、四代目市川團十郎が預かった時の仲蔵は「中村市十郎」と名乗っていたことなどを語ってから、本編へ。「稲荷町から名題への出世は異例」といったことは語らない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
《水原一平を待ち続ける》最愛の妻・Aさんが“引っ越し”、夫婦で住んでいた「プール付きマンション」を解約…「一平さんしか家族がいない」明かされていた一途な思い
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でハリー・ポッター役を演じる稲垣吾郎
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演、稲垣吾郎インタビュー「これまでの舞台とは景色が違いました」 
女性セブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反容疑で家宅捜査を受けた米倉涼子
「8月が終わる…」米倉涼子が家宅捜索後に公式SNSで限定公開していたファンへの“ラストメッセージ”《FC会員が証言》
NEWSポストセブン
巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン