ビジネス

「阪急と阪神」の鉄道事業 棲み分けできているが改善余地も

阪急と阪神は今後の課題をどうクリアしていくか

阪急と阪神は今後の課題をどうクリアしていくか

「阪急と阪神」2社が手を組むという関西財界に衝撃を与える経営統合から14年の月日が流れた。だが、阪急阪神HD(ホールディングス)の鉄道事業を見ていくと、長年続く“相克”や課題が見えてくる。

 1899年創業の阪神電鉄と、1907年に創業した阪急電鉄は、大阪・梅田~神戸・三宮間を並行して走る最大のライバル路線だった(別掲図参照)。

「ただ、大阪~神戸間を走る阪神の線路は50kmなのに対し、大阪と神戸、宝塚、京都を結ぶ阪急は150km。売り上げも阪急が圧倒的だ」(地元紙記者)

 何より、沿線のカラーが全く違う。山側の「高級住宅地」を走る阪急に対し、阪神は海側の埋め立て地を縫うように走る。

「同じ尼崎市にある駅でも、阪急は『武庫之荘』や阪急『塚口』といった高級住宅地やけど、阪神は競艇場のある『尼崎センタープール前』やで。雰囲気も乗ってくるお客さんも全然違いますわ」(神戸在住50代会社員)

 阪神タイガースの名物オーナーで、阪神電鉄社長を長く務めた故・久万俊二郎氏や阪神の人気選手たちも「みんな阪急『御影』『芦屋川』などの山側に住んでいた」(在阪スポーツ紙記者)という。

 関西の私鉄事情に詳しい大阪学院大学の中山嘉彦教授(鉄道技術史)の話。

「当初から高速走行を目指して直線の線路が多く、1編成あたりの車両を増やしてきた阪急と、列車を頻発させて“待たずに乗れる阪神電車”のフレーズを打ち出した阪神は方向性が全く違う」

 マルーン色に統一された阪急電車は「大阪梅田」から「神戸三宮」までの間の駅が14。一方、赤胴車と呼ばれたクリーム色と朱色のツートンや“巨人カラー”のオレンジとグレーのツートンなど様々な車体の阪神電車は、同区間で30駅。

「阪神は駅と駅の間がホンマに近い。『西宮東口』(2001年に廃止)があった時なんて、電車の先頭が次の『西宮』に着いた時、最後尾はまだ西宮東口の駅のホームにおるといわれたくらいやった」(関西在住70代男性)

 その2社が統合し、定期券や回数券を共有化するなど“融和”に努めてきた。『関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか』(交通新聞社)の著者で鉄道ライターの伊原薫氏はこういう。

「阪急電車でタイガースの車内広告を目にしたり、阪神電車で宝塚歌劇の車内広告を見るようになったことは衝撃でした。

 海側を走る阪神と山側を走る阪急の間にJR神戸線があるため、近年は“客の奪い合い”はなかった。企業カラー、沿線住民の気質の違いがあるので、統合後もうまく棲み分けている。それだけに、統合しても沿線住民がメリットを感じることは少ないわけですが」

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン