涙ぐむ妻の背中に手を当てる松岡
仕事以外の時間はすべて子供のために費やしてきたというほど、熱心に子育てに取り組んできた。出張で自宅を空けるときは、子供たちへの留守中の目標やメッセージを筆ペンで書いてリビングに貼っておく。それぞれの誕生日には、毎年長文の手紙を贈るなど、独自の手段で子供たちとの関係を築いてきた。ルールにも厳しかった。
「もちろん、嘘をついたり決まりを破ったときは徹底的に叱っていました。その場に立たせ、なぜそんなことをしたのか理由を問いただす。子供が反省していることが伝わってきたら、パッと気持ちを切り替え、抱き合ったり握手したりしていたそうです」(前出・松岡の知人)
子供と接する上で、松岡がもっとも意識していたのは、子供たちとの会話の時間だ。これは松岡自身が育った家庭の影響でもある。松岡は曽祖父に阪急・東宝グループの創始者・小林一三氏を持ち、父は東宝の名誉会長、母は元タカラジェンヌという名門一家に生まれている。家庭内はいつも、会話に満ちていたという。
「父や兄、姉と家族全員が揃う夕食は、3時間以上かけてゆっくり食べていたそうで、会話から学ぶことも多かったと話しています。その影響もあって、修造さんは自分が築いた家庭でも、会話を通じたコミュニケーションを大切にしたいと考えるようになったのでしょう。
子供たちに納得できるまで質問をぶつけ、とことん話し合ってきたのも、こうした背景が大きいのだと思います。でもここ数年は、修造さんが空回りしていたようです。息子さんたちも高校生の年頃ですからね……」(前出・松岡の知人)
自宅でひとりの時間が増えた
一枚岩に見えていた家族に異変が起きたのは、昨年のことだったという。
「長男が有名私立高校を1年で中退し、留学する道を選んだんです。さらに奥さんが自宅を空ける日も多くなりました。長女も宝塚の舞台で活躍を始め、多忙になったため、月の半分くらい兵庫へ行くようになったのです。修造さんは自宅でひとりになることが増えてしまった」(前出・松岡の知人)
家族の独立に寂しさはつきもの。しかし、松岡は家族間のズレにも悩みを抱いていたという。2018年12月5日発売の『プレジデントFamily2019冬号』では、子育てに関する後悔ともとれるこんな胸中を吐露している。
《僕は超ダメおやじだ》 《父親としての向き合い方がもっとちゃんとできていたら、子供たちにとって良かったんだろうなって》