エコーチェンバー現象とは、同類や同質のグループ等の中で、特定の情報が流通しそれが繰り返されると、共鳴するように増幅されていく現象。中でも、陰謀論は特にエコーチェンバー現象が起きやすいと言われている。
例えば11月4日、Facebookに公開された“STOP THE STEAL”(盗みを阻止せよ)というグループがある。票を盗まれたとするトランプ氏のツイートにより生まれたものだが、グループの概要には「トランプ氏の勝利と国益のために必要なことは何でもする」と書かれ、24時間で35万以上のフォロワーを獲得した。「偽情報を拡散し、暴力を扇動している」としてFacebookにより翌日削除されたが、極右のトランプ支持者にとって、まさに彼ら好みの情報であり、過激な言動を正当化する論拠となっただろう。
彼らのような極端な支持者に敗北を認めさせるには、「トランプ氏はここまでやった」という言い訳が必要らしい。大統領選の結果を左右する重要な州で法的に争う構えを見せ、裁判で決着がつく最後の時まで諦めない姿勢を示さなければ納得できないというのだ。だが、本当に言い訳が必要なのは彼らではなく、「力強い大統領」という自己像に縛られたトランプ氏自身ではないだろうか。
ある世論調査によると、民主党員だけでなく共和党員の約6割、米国民の約8割がバイデン氏が当選したと認識しているという。トランプ氏の応援団だったFOXニュースなどの保守系メディアも、距離を置き始めているという報道もある。この世論の流れに押され、今後バイデン氏の勝利を受け入れる人は加速度的に増えると予想される。
トランプ氏はこの先、人々にどう思われたいのか。おそらく、大統領でなくなっても、力強い存在として人気を保ち、支持者らの賞賛を浴びたいのだろう。だが、これ以上の抵抗や沈黙は果たして得策なのか、密かにトランプ氏の逆転を期待していた者としては、もうそろそろ、「さすがトランプ」と思える潔い敗北宣言を望んでいる。