『THE W』の初代覇者はゆりやんレトリィバァ
制作サイドは月1回程度の割合で、女性芸人に限定したライブ「THE W presents 女芸人祭り」を開催。ネタをブラッシュアップする場を作り、お客さんにアンケートをとりネタ作りの参考にしてもらった。芸人にヒヤリングを行い、観客との距離、スタジオの景色等、ネタをしやすいセット作りを心がけた。
「テレビのスタジオって結構広くて、天井も高い。でも演者さんからすると、もっと閉じられた空間の方がやりやすいそうなので、両サイドに壁を作りました。他にも、お客さんの顔が見渡せるように席も階段状にしたり。5つぐらいの劇場を回って、劇場に近いセットにしたんです」(宮森)
採点方法も大幅に変更した。それまでは視聴者投票で勝敗を決めていたが、実績のある芸人6人を審査員に招いただけでなく、ノックアウト方式というお笑いの賞レースとしては新たな採点方法を採用した。
決勝戦は、まず10組を2つのブロックに分ける。そしてファーストステージは、5組のうちまず2組がネタを見せて勝敗を決め、3組目以降は「前の勝者とどちらがおもしろかったか」という二者択一で勝敗が決められる。両ブロックを勝ち抜いた2組で最後、決定戦を行う。同方式に踏み切った理由を宮森が説明する。
「あらゆる賞レースの採点方法を比較検討したのですが、『THE W』は他のお笑い賞レースと決定的な違いがある。異種格闘技戦なんです。漫才もあれば、コントもあれば、ピン芸もある。もっとも客観的評価が難しい。なので、シンプルにどっちがおもしろいかという判定だけしていただこうという結論に至りました」
投票権は視聴者にも残した。審査員の6票と、視聴者の1票、全7票で競われる。視聴者投票にこだわった理由を宮森はこう話す。
「女性芸人の場合、うちの番組の『イッテQ!』で活躍されているイモトアヤコさんのようにお茶の間の支持を得て人気者になるケースが多い。なのでプロの方の目線だけでなく、お茶の間の支持も得た人が優勝する形にしたかった」
そうしたさまざまな工夫が功を奏し、昨年の大会は、松本人志が「見応えたっぷりのちゃんとしたコンテストになってきた」とコメントするなど、大成功を収めた。その後、王者の3時のヒロインが狙い通り新たなスター芸人となった。
今年も準決勝の盛り上がりを見る限り、成功はほぼ約束されていると言っていい。決勝に残った10組の顔ぶれにも異論はない。ただ、彼女たちだけでなく、まだまだ見て欲しかったネタがいくつもあったのだが。
※週刊ポスト2020年11月20日号