日本郵政グループは株式上場から「失敗の連続」
日本郵便は2012年10月1日付で、日本郵政傘下の郵便事業会社と郵便局会社が合併して誕生した。現在、全国で2万4341の郵便局を運営し、従業員数19万3257名(2020年3月末時点)の巨大組織だ。
しかし、郵便物の取り扱い件数は2001年度の263億件をピークに年々低下し、2019年度は163億件。2021年用の年賀はがきの当初発行枚数は19億4198万枚と、初の20億枚の大台割れとなった。郵便物はこれからもどんどん減る。
減少する郵便物に対応した作業量の見直しは避けて通れない。だから、ロボットによる自動配送に力を注いでいるというわけだ。
そもそも日本郵政グループの持ち株会社である日本郵政株式会社の傘下、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社を同時上場させるという“暴挙”は東日本大震災の復興財源を確保するという大義名分があったから許されたものの、「失敗に終わった」との辛口の評価が多い。
日本郵政の増田寛也社長は10月30日の記者会見で、「株式を公開すれば市場の監視にさらされ、緊張感を持った経営をするきっかけになるはずだったが、そうなっていない。株主に申し訳ない」と陳謝した。
株式の売り出しの時には、時価総額で1987年のNTTに次ぐ大型IPOとして話題を集めた。「安心できる銘柄」という、野村など大手証券会社のセールストークに乗せられた元教員や元公務員など、堅い仕事をリタイアした高齢の個人投資家が日本郵政グループ3社の株式を買ったが、上場時に買った個人投資家は株価が半分になり、ほぼ全員が含み損を抱えるという惨状を呈している。
ちなみに、この5年で日経平均株価は2割超値上がりしている。いや、11月中旬、日経平均株価は暴騰して、2万5000円という29年5か月ぶりの高値をつけたから、パフォーマンスの差はもっと大きくなった。
ゆうちょ銀、かんぽ生命の金融2社の先行きも厳しい。ゆうちょ銀は融資業務が法律で制限されているうえ、巨額の貯金を市場で運用するにも、新型コロナウイルス流行で世界的な超低金利に拍車がかかる。かんぽ生命は少子高齢化を背景に契約者が減少傾向だったところに不正販売で新規契約が激減した。
稼ぎ頭の金融2社の収益力が細れば、全国一律のサービスの提供を義務付けられている郵便局網(日本郵便)の維持も難しくなる。
日本郵政グループは2021年度から次期中期経営計画をスタートさせる。デジタル技術を使った郵便局の新サービス創出や不動産事業の強化、地方銀行や自治体からの事務委託の拡大などが軸になる。
日本郵便株は日本郵政が100%株式を保有している。増田社長は「膿は今年中に出し切り、次の経営計画に臨みたい」というが、郵便物は右肩下がりで、新型コロナ禍による巣ごもり需要を受けて好調な「ゆうパック」だけでは補いきれない。