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日本郵便が「自動配送ロボット」の実用化を急ぐ深刻な事情

無人配送システムで日本は“周回遅れ”

 日本郵便は2020年1月30日、神奈川県相模原市の「さがみロボット産業特区実証フィールド」で、ロボットベンチャーのAmoeba Energy(アメーバーエナジー、神奈川県藤沢市)の荷物運搬ソフトロボットを使った実証実験を実施した。

 ソフトロボットは段差や階段を自在に上り下りして荷物を運ぶことが可能な世界初の荷物搬送ロボットだ。荷台部分に最大6kgまでの荷物を積み、作成した建物の3Dマップに沿って時速1kmで走行。ロボットが中央で折れ曲がることで荷台が傾き、荷物をやさしく降ろすことができるという“優れモノ”だ。配達後は写真を撮影して受取人へ送信し、配達完了を通知する。

 こうして日本では無人配送ロボットの実証実験が進められているが、世界を見渡せば米国や中国ではすでに実用化され、無人で配送する仕組みが広がりつつある。日本は完全に出遅れ、これから仕組み作りが始まるところだ。

 例えば米国では州レベルで自動走行するロボットが認められており、ピザハットやウォルマートなどと連携して実用化へ動いている。米配送大手フェデックスは2021年にも、日本でロボット配達の実証実験に乗り出す計画だ。中国の事例ではネット通販大手が配送ロボットを使い、都市によっては病院の物資配送のため公道の走行ができるようにする動きがある。

 日本郵便が世界の事例で関心を寄せているのは、郵便配達員を支援するロボットが導入されたドイツ。黄色で4つの車輪を持ち全天候で稼働可能なロボットだ。配達員の足をセンサーで検知しながら、その後ろをついて行って郵便物や小包を運ぶ。障害物を避けながら最大15kgの荷物を運ぶことができるという。

 いま、物流業界には87万人のトラック運転手がいる(2019年時点)が、ネット通販の拡大で深刻な人手不足が続いている。鉄道貨物協会の試算によると2028年度には約28万人のトラックドライバーが不足する。とりわけ消費者宅へのラストワンマイルに携わる人材が足りなくなるため、もはやロボットに頼るしかないのかもしれない。

 ドイツでもネットショッピングの拡大により、配達員が運ぶ小包は重たくなる一方だった。そこで疲労困憊する郵便配達員を救済するために郵便配達員を支援するロボットが取り入れられた経緯がある。

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