ビジネス

日本郵便が「自動配送ロボット」の実用化を急ぐ深刻な事情

日本郵便が公道で行った「配送ロボット」の実証実験(時事通信フォト)

日本郵便が公道で行った「配送ロボット」の実証実験(時事通信フォト)

 郵政民営化から13年。日本郵政グループの稼ぎ頭といわれた傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命の金融2社に対し、民営化による“果実”が見えてこないのが、全国津々浦々に郵便局網を張り巡らせる日本郵便だ。肝心の郵便事業が右肩下がりになるなか、果たして復活の処方箋はあるのか──。ジャーナリストの有森隆氏がレポートする。

 * * *
 10月7日、日本郵便が東京・千代田区で配送ロボットの公道での実証実験に乗り出し、報道陣に公開した。物流分野での配送ロボットの公道実験は国内初である。消費者のもとに配送する“ラストワンマイル”での活用を想定しており、安全性を確認して3年以内の実用化を目指すという。

 ラストワンマイルとは文字通り、最後の1マイル(1.6km)のこと。米国で生まれた言葉だ。宅配業者が最も苦労する、顧客に商品を手渡しするまでの最後の業務を指すが、これがなかなか難しい。道路の渋滞や顧客が不在なことも多く、再配達は最もコストがかかる分野といわれている。

 実験に使ったのはZMP(東京・文京区)製のロボット「デリロ」。東京逓信病院内のコンビニで預かった荷物を約700メートル先の麹町郵便局まで、歩道を通行して届けた。

 デリロは縦96cm・横66cm・高さ109cmで車イスほどの大きさ。車体の上部にレーザーを使って映像を撮影する装置を搭載し、実際の映像とあらかじめ読み込んだ3Dマップとを照らし合わせながら走行する。最高速度は6kmほどで、重さ30kgまでの荷物を運ぶことができる。1時間の通常充電で4時間稼働する。通行人や自転車が1~2mの距離まで近づくと自動で止まる機能がついている。

 宅配荷物を家庭へ運ぶロボットの公道走行解禁に向け、国土交通省は2021年度、規格や性能要件の整備に着手する。安全に走行できる速度条件のほか、人や自転車、車と接触した際にショックを和らげるようにするなど、求められる装備を網羅することにしている。

 折しも新型コロナウイルスの感染拡大で宅配需要が増えたのを受け、公道走行の規制緩和が急がれる。想定しているロボットは小型で、時速数kmとゆっくり走行する。遠隔操作で食品、日用品などを家庭に届けたり、集荷したりする。宅配業界の人手不足の解消につながるだけでなく、人同士が接触しないため感染リスクも減らせるというわけだ。

 加藤勝信官房長官は10月31日、日本郵便による自動配送ロボットの公道走行実験を視察した。視察後、記者団に「スピード感を持って実用化できるように、関係省庁がしっかり取り組んでほしい」と述べ、議長を務める成長戦略会議などで議論を加速すると表明した。

 アフターコロナのラストワンマイルで、ロボットの活躍の場が広がることは間違いないが、配送ロボットは道路交通法上の位置づけが不明確で、実用化には法整備が必要不可欠だ。交通ルールの見直しには警察庁などとの連携も必要になる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」