「某大手人材派遣会社とか、海外の人材を合法的に受け入れたかった勢力は幾つも思い当たりますけどね。
最近はコロナで仕送りがなくなった大学生が風俗で働いて家賃を捻出したり、下層への底がいよいよ抜けた感じがする。新首相も自助と言ってるし。僕も田川同様、個人経営の店や町中華は大好きですが、そういう店ほど姿を消し、AIに人が働かされる時代も間近に迫る今、少なくとも日本のイイ面だけを煽る番組なんかを観て喜んでちゃダメだと思う。誇りがどうとか言って繋ぐべき技術も次に繋がなかった頑固な人たちが、この国をおかしくしたと僕は思ってるんで」
日本の今を克明にスケッチし、「田川が違和感を覚える限り続くと思う」という本作品群は、私たちが何を失おうとしているかを巡る、気づきの物語でもある。
【プロフィール】
相場英雄(あいば・ひでお)/1967年新潟県生まれ。「この中に出てくる元新聞奨学生の過酷な体験はほぼ僕の話です」。89年時事通信社に入社、主に経済畑で活躍し、2005年に第2回ダイヤモンド経済小説大賞受賞作『デフォルト 債務不履行』でデビュー、翌年専業に。12年、BSE問題や地方空洞化を題材にした『震える牛』がベストセラーに。続編『ガラパゴス』や、みちのく麺食い記者シリーズ、『血の轍』『不発弾』『トップリーグ』など話題作多数。172cm、71kg、A型。
構成/橋本紀子 撮影/国府田利光
※週刊ポスト2020年12月11日号