芸能

大泉洋主演の笑える『三國志』、時代劇研究家はどう見たか

福田雄一監督の『新解釈・三國志』(公式HPより)

福田雄一監督の『新解釈・三國志』(公式HPより)

 福田雄一監督で、豪華なキャストが集結した映画『新解釈・三國志』。まさに福田ワールドと言うべき同作は、これまでの『三國志』とは一風変わった作風が話題を呼んでいる。時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが見どころを解説する。

 * * *
 何かと話題の映画『新解釈・三國志』。さすがに『銀魂』『今日から俺は!!』の福田雄一監督による「新解釈」だけに、これまで多くの小説、マンガ、映画が描いてきた『三國志』とはまったく異なる驚くべきシーンの連続なのだが、不思議なことに「まあ、いいんでないかい」と思えてくるのである。

 そもそも『三國志』は、約1800年前、広大な中国で「魏」「蜀」「呉」三国が覇権を争い、群雄割拠していた時代の話。蜀の国のリーダー劉備を福田組映画初参加の大泉洋。彼にスカウトされる軍師・諸葛亮孔明をムロツヨシ、魏の曹操を小栗旬、呉の周瑜を賀来賢人、暴君・董卓を佐藤二朗、黄巾を山田孝之など、共演陣には福田組が大集合している。

 りっぱなヒゲ、がっちりした鎧、山野を疾走する馬、うごめく大軍…おお、超大作!! 確かにデラックスなのだが、よく見れば、「英雄」と言われる劉備は、戦いのたびに腰が引けてるし、「稀代の天才軍師」と称される孔明も「戦においてもっとも大切なことを申します」と言うから、どんなすごいことを言うのかと思ったら、「ネバギバ☆」とごまかし笑いをする始末。

あらら、予想通り笑える『三國志』になってるよ…。記者会見などで大泉、ムロが「『三國志』ファンには見てほしくない」「(香港でも公開されると聞いて)現地には『レッドクリフ』に出た人もいるかもしれないのに大丈夫!?」と不安げだったのもよくわかる。

 が、それでも「いいんでないかい」と思えるのは、この解釈をした人物として、現代の歴史学者・蘇我宗光役で西田敏行が出ていること。西田先生に「私の新解釈では、こんな感じだったんじゃねかな~」と言われたら、「ですよね~」ともうなずきたくなる。大泉・ムロの「誰も劉備に会った人はいないんだから、こういう人だったかもしれない」という発言は、真実なのである。

 この真実をついたのが、2014年に放送されていた福田脚本・演出、主演・ムロツヨシ(ちなみに連続ドラマ初主演作)のドラマ『新解釈・日本史』であった。

 毎回、ムロが歴史上の有名人になって、本当はこういう人だったかもしれないという姿を描いたこのドラマ。織田信長は本能寺の変で自害しようとすると、「こえーっ」と恐怖心を丸出しにし、坂本龍馬はなかなかまとまらない「薩長同盟」のために西郷隆盛にスリスリしたり、ポニーテール少女のように髪を揺らしてアハハとスキップしたり、聖徳太子に至っては、「憲法を定めましょう」と言われ、太極拳みたいな拳法のポーズをとったりする。歴史偉人が全員ボケまくり、わがまま放題に「新解釈」をされていたのである。

『新解釈・三國志』は、福田監督の壮大な新解釈魂が、世界サイズになった。そう「新解釈」すれば、すんなり納得。「〇〇である」「〇〇しようぞ!」など、いかにも偉人が言いそうなセリフ回しから、一気に「うるせーわ」「絶対やだかんな!」と現代人の普通の会話言語にスイッチし、カックンとなる技は、世界サイズでも炸裂している。

 過去にもたとえば、「忠臣蔵」の偉大なリーダーとして称えられる大石内蔵助を「優柔不断男」「大の女好き」などと描いたドラマや作家もいた。歴史の新解釈はエンタメの伝統でもある。壮大なのにゆるく笑える「新解釈」が、まだまだ続けばいいなあと願わずにはいられない。ネバギバ☆。

関連キーワード

関連記事

トピックス

女優のジェニファー・ローレンス(dpa/時事通信フォト)
<自撮りヌード流出の被害も……>アメリカ人女優が『ゴールデン・グローブ賞』で「ほぼ裸!」ドレス姿に周囲が騒然
NEWSポストセブン
豊昇龍、大の里、八角理事長
【八角理事長が「金星」を語る】大の里、豊昇龍が歴代最多配給ペースに! 理事長は「今は三役が少ないから。2横綱はよくやっている」と評価 現役時代の安芸乃島戦を振り返り「平幕の時は嫌な感じが…」とも述懐
NEWSポストセブン
次期衆院選への不出馬を表明する自民党の菅義偉元首相(時事通信フォト)
「菅さんに話しても、もうほとんど反応ない」菅義偉元首相が政界引退…霞が関を支配した“恐怖の官房長官”の容態とは《叩き上げ政治家の剛腕秘話》
NEWSポストセブン
ボニー・ブルーがマンU主将から「発散させてくれ」に逆オファーか(左/EPA=時事、右/DPPI via AFP)
「12時間で1057人と行為」英・金髪インフルエンサーに「発散させてくれ…」ハッキング被害にあったマンU・主将アカウントが名指し投稿して現地SNSが騒然
NEWSポストセブン
現地の“詐欺複合施設”(scam compounds)を追われる人たち(時事通信=AFP)
《“カンボジアでかけ子”日本人が13人逮捕》「空港に着いた瞬間に拉致」「 “詐欺複合施設”で囚人のような生活も」“国際詐欺組織”が日本人を闇バイトに引き入れる恐怖の手口
NEWSポストセブン
参政党は国政経験が乏しく、国会議員経験者を積極的に受け入れているという(時事通信フォト)
《参政党議席増で高市政権連立入りの可能性》 重婚疑惑に「このハゲー!」発言…自民党を追われた“すね傷議員”を続々擁立か「自民党に恩を売る絶好の機会」
NEWSポストセブン
巨人への移籍が発表された楽天・則本昂大(時事通信フォト)
楽天・則本昂大の巨人入りに大物OBが喝! 昨年の田中将大獲得に続く補強に「下の下のやり方。若手はチャンスがなくなりやる気が失せる。最低ですよ」と広岡達朗氏
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組が初詣に》“武闘派エルメス若頭の動向”に警察が関心…司忍組長不在の参拝で注目集まる「七代目誕生時期」
NEWSポストセブン
“マッサージ店”の元マネージャー、プンシリパンヤー・パカポーン容疑者(38)。12歳のタイ少女にわいせつな行為をあっせんさせた疑いがある(写真右:時事通信)
〈仕事の初日、客は1人〉〈怖くて手も腕も足も震える〉押収物の“日記”に綴られた壮絶な日々……12歳タイ少女に性的サービスあっせんの“ブローカー”タイ人女性(38)が検挙
NEWSポストセブン
中国出身の女性インフルエンサー・Umiさん(TikTokより)
「長期間歩かずにいたせいで神経に影響」クスリ漬け、歯を全部抜かれたのでは…中国ギャル系インフルエンサー(20)の現在の容態《“詐欺集団の幹部の恋人”説に本人が「以前はね」》
NEWSポストセブン
北海道日高町で店の壁の内側から遺体が見つかった事件。逮捕された松倉俊彦容疑者(49)、被害者の工藤日菜野さん。(左・店舗のSNSより、右・知人提供)
「2人の関係は公然の事実だった」飲み屋街で目撃されていた松倉俊彦容疑者と被害女性の“親密な関係” 「『嫁とはレス』と愚痴も」【日高・看護師死体遺棄】
NEWSポストセブン
島根県の私立松江西高校で男子生徒が教師と見られる男性に暴言や机や椅子を投げたりする動画が拡散されている(HP/Xより)
「謝れや、オラァ!」私服の生徒が暴れ、“おじいちゃん教員”は呆然と立ち尽くし…「炎上した動画は氷山の一角です」島根・松江西高校のOBが明かした“環境激変”の実情
NEWSポストセブン