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現在も会社員と小説家の二足のわらじを続ける志駕晃さん

鴻上:当時はまだ、“コンプライアンス違反”なんて言葉もない頃。多少の問題なら笑って許された。だから思いついたことを好きなように実行できました。例えば東大受験したリスナーの合格発表をほかのリスナー100人と一緒に東大構内に見に行き、見事に合格したからみんなでジェンカを踊って祝福したり(笑い)。

志駕:鴻上さんの「早朝ジェンカ」はオールナイトニッポンの中でも歴史に残る名企画でしたね。ニッポン放送近くの日比谷公園で放送終了後の午前6時からジェンカを踊ろう、とリスナーに呼びかける。

鴻上:「オレは朝6時から日比谷公園の噴水前でジェンカを踊るけど、お前ら絶対に来るなよ」というのが合い言葉。200人くらい来たこともあったな。あるときはちょうど放送局の近くにある警察署の早朝訓練と重なって、ぼくらが集まっている向こう側から100人くらいの警官がザッザッザッとランニングしてきたんです。無届け集会で捕まると思ったから、すぐに「解散! 散れ!」と叫んで事なきを得たけれど、大騒ぎでした(笑い)。

志駕:アハハハ。当時は、むしろ、本番でそのくらい変わったことができない番組はダメという感覚でした。

鴻上:大みそかにニッポン放送の玄関前で鍋を用意して、「いまから具を募集。欲しいもの、かに、かき、えび、以上!」と呼びかけたのも思い出深いです。素性の知らない人からもらったかきを食べるなんて、いまなら絶対にストップがかかるけれど、当時は何の疑問もなく食べていました(笑い)。

志駕:ぼくもそんな風土で育ったけど、いまならダメなことばかり。昔は何か問題が起きても一晩寝ればリスナーには忘れてもらえたけど、いまは放送がリアルタイムでSNSにアップされ、それがネットニュースに出て、気になった人が『ラジコ』で聴くから、後々まで残ってしまう。

鴻上:確かに、ネットニュースが文化を変えたように思えます。志駕さんが言うように深夜ラジオはある種、解放区だったけれど、いまはそうじゃない。

志駕:だからもしいま、番組の企画を考えろと言われても、何がダメで何がOKなのか、うまく判断できないような気がします……。

【プロフィール】
志駕晃(しが・あきら)/1963年生まれ。明治大学商学部卒業後、ニッポン放送入社。制作部、編成部等を経て、その傍ら小説を書き始め、2017年に『スマホを落としただけなのに』が第15回『このミステリーがすごい!』大賞〈隠し玉〉に選ばれ、デビュー。同作はシリーズ第2作『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』共々映画化され話題に。著書はほかに『ちょっと一杯のはずだったのに』『オレオレの巣窟』『私が結婚をしない本当の理由』等。

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/1958年生まれ。1981年に劇団「第三舞台」を結成。1987年『朝日のような夕日をつれて’87』で紀伊國屋演劇賞団体賞、1995年『スナフキンの手紙』で岸田國士戯曲賞、2009年戯曲集『グローブ・ジャングル』で読売文学賞受賞。主な著書に、『同調圧力』『「空気」を読んでも従わない』『「空気」と「世間」』『鴻上尚史のほがらか人生相談』『ドン・キホーテ 笑う!』ほか多数。舞台公演のかたわら、ラジオ・パーソナリティー、テレビ番組の司会、映画監督など幅広く活動。

◆撮影/為末直樹

※女性セブン2021年1月7・14日号

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