ビジネス

2020年にひっそりと消えたクルマたち なぜ切り捨てられたか

今年8月に生産終了したトヨタの「レクサスGS」

今年8月に生産終了したトヨタの「レクサスGS」

 100年に1度の大変革と言われ、技術革新の荒波にもまれている自動車業界。近年はモデルチェンジのサイクルも早まり、毎年多くのブランドが生産を終了し、市場から姿を消している。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、今年コロナ禍でひっそりと消えたブランドの一部を挙げて、その理由について考察する。

 * * *
 コロナ禍による影響とあいまって、いま自動車業界では次の世代に向けた事業のメタモルフォーゼのスピードがさらに上がっているように感じられる。そんな中で増えたのが、“無駄なモデル”の整理だ。

 クルマ自体が古かったり、市場の特性に合わなかったりするものは、容赦なくバッサバッサと切り捨てられる時代。2020年もいくつものモデルが後継機種もないままに姿を消したり生産終了が発表されたりした。

日本固有サイズの作り分けが非効率的に
「プレミオ/アリオン」(トヨタ自動車)

 今年12月、トヨタ自動車は5ナンバーセダンの「プレミオ/アリオン」、サブコンパクトトールワゴンの「ポルテ/スペイド」、そして3列シートの「プリウスα」と、一気に5車種のモデル廃止を発表した。生産終了は2021年3月。

 この5モデルに共通するのは、つい7、8年ほど前まではそれなりに人気があり、販売台数もほどほどだったということ。そして、人気が日本市場限定だったということだ。その典型例が5ナンバーセダンのプレミオ/アリオン兄弟と言える。

クラウンの面影を少し投影していたトヨタ「プレミオ」

クラウンの面影を少し投影していたトヨタ「プレミオ」

 プレミオの前身はトヨタの伝統的モデルのひとつであった「コロナ(最終型はコロナ・プレミオ)」。アリオンはその兄弟車として1977年に登場した「カリーナ」で、ともに2001年に登場した。

 両方とも5ナンバーボディで、プレミオはその時代の「クラウン」の面影をちょっと投影した、クラウンをうらやましいと思うタイプの人たちへ、アリオンのほうは保守的セダンではあるが若干若作りしたいという人たちへという両取り戦法で一定の人気を得てきた。

保守的セダンでかつては人気もあったトヨタ「アリオン」

保守的セダンでかつては人気もあったトヨタ「アリオン」

 だが、ここにきてプレミオ/アリオンとも主要顧客が免許返納を考える年齢にさしかかり、販売は完全に停滞。5ナンバーの法人需要や若干残った個人需要は下のクラスの「カローラアクシオ」で十分に満たすことができると判断したのだろう。5ナンバーという日本固有のサイズのモデルをいくつも残しておくのは非効率ゆえ、当然車種整理の対象となった。

 トヨタはもともと車種の作り分けについてのノウハウは非情に豊富だ。たとえば「ヤリス」が5ナンバーの日本版と3ナンバーの海外版、さらにプラットフォームの手術なしで3ナンバーの「ヤリスクロス」と、低コストに作り分けている。カローラシリーズもしかりだ。そのトヨタでさえ、少数顧客にサービスで日本専用モデルを多数用意するだけの余力はない時代。モデル廃止は当然の流れと言えるだろう。

関連記事

トピックス

大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」