伝説の始まり、ソニスフィアの奇跡
2016年4月2日には、ロンドンのウェンブリー・アリーナで日本人初となるワンマンライブを開催し、同会場のグッズ売り上げ記録を更新した。昨年リリースされた3rdアルバム『METAL GALAXY』で、米ビルボードの総合アルバムチャートで1969年の坂本九の記録を56年ぶりに更新する13位に入るなど、彼女たちが達成した快挙は枚挙に暇がない。
音楽ジャーナリストの柴那典氏は、その中でも最大のターニングポイントとなったのが、ファンの間で「ソニスフィアの奇跡」として語られる2014年のソニスフィア・フェスティバルUKへの初出演だと語る。
「話題性や人気ではなく、パフォーマンスそのものでイギリスに集まった数万人のメタルファンの度肝を抜いた。あそこで最初のオセロのコマがひっくり返ったのは間違いないと思います。メンバーに10年を振り返るインタビュー取材などもしたのですが、そこでも最大のハイライトとして挙がったのがソニスフィア・フェスティバルへの初出演でした」(柴氏)
イギリスを代表するロックフェスであるソニスフィア・フェスティバルにはこの年、ヘッドライナーのメタリカ、アイアン・メイデン、ザ・プロディジーをはじめスレイヤー、リンプ・ビズキットら錚々たる顔ぶれが並んだ。その中に日本の当時16歳と15歳の少女が名を連ねるだけで大変なことである。
その上さらに、当初はサブ・ステージへの出演だったところ、予想を上回る反響に急遽6万人規模のメイン・ステージへの昇格を果たしてしまう。フランスのジャパン・エキスポのように日本のカルチャーを見に来るわけではない観客を前に、しかしBABYMETALは堂々のステージを展開してみせる。最初は様子見だった観客からも次第に歓声が上がり、興奮の波が広がっていく。
そしてラスト曲の「イジメ、ダメ、ゼッタイ」では、観客によるモッシュ(観客同士が激しくぶつかり合う盛り上がり方)まで発生。終演後にはBABYMETALコールとともにアンコールを求める「We want more!」の大合唱が起こったのだった。例えるなら、日本の高校球児が米メジャーリーグの試合に出るようなもの。いや、メジャーのオールスター戦で猛打賞の活躍をするようなものではないだろうか。