赤坂の高級タワマンに住む社長の一人は、やはりセキュリティ面を住まい選びの理由に挙げた。
「一軒家よりマンションのほうがセキュリティが堅牢です。敷地に入るところに守衛がいて、エントランスまでクルマで行けますから安心です。タワマンはプライベート・ジムなども併設されていて、人目を避けて生活したい社長さんたちに好まれるのでしょう。このあたりは大使館が多くて、人通りは少ないけど警官が多いというのもいいですね。
田園調布や成城、大泉学園などは物件の価格も下がっていて資産性も良くないので嫌われています。港区のマンションや土地は中国人投資家も参入してどんどん値上がりしていますから、資産としても魅力的なんです」
では、今後のトレンドはどうなっていくのだろうか。前出の永木氏は、「コロナの影響で在宅勤務やテレワークが進み、本社機能を縮小、移転する企業が増えています。社長も都心に住む必要はなくなって、郊外や地方などに移住する可能性もあります」と予測する。
不動産ジャーナリストの榊淳司氏は、郊外でもなく都心でもない新しいブランドが生まれつつあると指摘する。
「センスのいい社長たちがいま狙っているエリアが代々木上原や代官山です。上原はもともとお屋敷町だったところに低層マンションが多く建ち、雰囲気としては“マンションの田園調布”といったイメージです。そうした街に住みたいと言って物件や土地を探し続ける人は意外と多いのです。土地の希少価値が高いということは値下がりもしない。港区はどちらかというと新興企業の社長が住むケースが多いですが、上原や代官山は長い目で見てそこに価値を見出す社長たちが選ぶ街ですね」
社長の住所は時代を映す鏡でもあるようだ。