また、12月8日深夜、15日深夜と二週にわたって『深夜の音楽食堂』にゲスト出演したMPCプレイヤーのSTUTS氏は、松重氏のトークの進め方をこう振り返る。
「松重さんの視点でゆっくり人となりやルーツを掘り下げて下さるのがとても素敵だと思います。昔の音楽から最近の音楽まで色んな年代の音楽のお話をされていて、昔から音楽がお好きで常に新しいものをチェックされているのだなと感じました」
自らの音楽知識をひけらかすのではなく、ゲスト・ミュージシャンと真摯に向き合う姿勢は、多くのリスナーに好感を持って迎えられているに違いない。そうした姿勢は、決して大多数が支持するわけではないニッチな音楽であっても変わらない。松重氏はそんなマニアックな番組を“甘納豆”になぞらえて説明する。
「100人のうち3〜4人が辛うじて面白いと言ってくれるような番組。そんなわがままな番組を4年も放置してくれた放送局には感謝です。
そんな絶対的少数派であるリスナーの皆様に今問いかけているテーマは『甘納豆』。甘納豆という食べ物はどこの名産とも言われず、老舗や名店と呼べる店も全国に散らばっています。ニッチな美味を求めて全国のリスナーに情報を求めています。
絶対的少数派の砦ともいうべき『深夜の音楽食堂』。3年続けば御の字でしたが、次は5年目の節目に向けて、マニアックに発信し続けて行きます」(松重豊氏)
まさしく『深夜の音楽食堂』は“絶対的少数派の砦”だ。甘納豆が名産品と呼ばれなくても存在価値があるように、マニアックな音楽もまた、たとえ売上チャートに載らなくても大いに価値がある。
その“砦”は、松重氏の音楽に対する深い知識と、新しい音楽に対する柔軟な理解があるからこそ、成立している場所でもある。2021年で5年目に突入する『深夜の音楽食堂』は、1月5日深夜、12日深夜と二週連続で映画監督の松居大悟をゲストに迎えて、新年の放送をスタートする。10年、20年先もこの場所から新しい音楽が流れていることを願ってやまない。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)