フードデリバリーの配達員(時事通信フォト)
2020年10月、神戸で外国人男女が出入国管理及び難民認定法違反の不法残留容疑で逮捕された。彼らは2018年9月に技能実習ビザで入国したが、ビザが切れた後も不法に日本に滞在してウーバーイーツの配達をしていたという。この逮捕、ウーバーイーツの地蔵中の逮捕で、「ウーバーイーツの人たちが路地でたむろしている」という通報による職質がきっかけだが、以後、ウーバーイーツの地蔵を職質すれば不法滞在者を芋づる式に捕まえられるとばかり、警察の地蔵狩りが頻繁に目につくようになった。
「地蔵してる人と一緒にいるのもなんだか怖いし、縄張りみたいなのもあるみたいで地蔵はしません。寒いし」
名前と顔写真が人質ですから、不安ですね
そんな殺伐とした生存競争激しい「個人事業主」ウーバーイーツ配達員。肉体労働に従事する女性はたくさんいるし、体力的な問題というわけでもないだろう。女性の少ないことに理由はあるのだろうか。
「やっぱり顔写真じゃないですか、注文した人に見られちゃいますから、敬遠する女の子は多いかもしれません」
かつて、ウーバーイーツが日本にそれほど浸透しなかった時期があったのは、この「顔写真」問題もあった。海外では当たり前の実名顔出し上等文化も、匿名文化の強い日本では敬遠された。それまでの日本のデリバリーはせいぜい名前だけ、顔と名前が一致したデータを客に渡すことなどまずなかった。古くからの蕎麦屋とか寿司屋の出前なんて「とりあえず電話注文を持ってくる人」というだけで、馴染みでなければ名前なんか知らないだろう。知っていたとしても『サザエさん』に登場する「三河屋のサブちゃん」(本名・三郎)程度の認識か。ピザ屋にはネームプレートを下げているデリバリースタッフがいるが、名前なんてよほどの問題が発生しなければ気にもしないだろう。しかしウーバーイーツは配達先の人のスマホに顔写真と名前がバッチリ晒される。写真は小さいし客に表示される名前はファーストネーム(先のサブちゃんなら「三郎」)だけだが、副業禁止と定めている会社が多く、身バレに神経を使う市井の日本人にとっては抵抗あるのも無理もない。
「でも指名はないんですよ、写真とか評価で選ばれないんです。面白いなと思いました」
そう、配達員の指名はできない。あくまで自動抽選されるマッチングアプリでしかないので配達員、店、客の三者がそれぞれ評価をつけるのがせいぜいだ。この顔写真、自己紹介や趣味を入力して配達先とのコミュニケーションや会話を充実させる役割もあるそうだが、いかにもアメリカンな仕様だ。本当にこのウーバーイーツのシステム、これまでの道路交通法上の問題や雇用上の問題も含め、現時点ではつくづく日本に合っていない。「こまけぇこたぁいいんだよ」からスタートして「便利」の一点突破で普及したところはかつてのAmazonに通じるところがある。
「写真があるとお客さんが安心するんですかね、お客さんは拒否できないのに」