むしろ世間では、“最も言ってはならない言葉”とさえされているような内容だ。だが、ちさ子は“普通”じゃなかった。
「母親からは“みっちゃんのできない分まで2人分生きなさい〟と言われるわけですよ。でもプレッシャーに感じるどころか、〝私には2人分できる能力があるに違いない〟って勘違いして生きてましたから(笑い)」
ちさ子の幼少期は、ダウン症に対する社会の理解が、いま以上に乏しい時代。
姉と一緒にいるときに、好奇の目で見られたり、陰口を叩かれたりすることもあった。
「そんなとき、私は相手が上級生でも男の子でも『さっき、何かこそこそ言ってたよね?』と堂々とけんかを吹っ掛けていきました。
男子生徒にみっちゃんのランドセルをどぶ川に捨てられたとわかったときは、相手が年上でも仕返しの殴り込みです。けんかっ早いといわれる私の性格は、そんな経験から来たのかもしれません」
そんなちさ子の様子を見て、母はしょっちゅう「あなたみたいな悪ガキの方が、みっちゃんより始末におけないわ!」とため息をついていたという。
【プロフィール】
高嶋ちさ子(たかしま・ちさこ)/1968年東京都生まれ。6才でヴァイオリンを始める。桐朋学園大学を経て、1994年イェール大学音楽学部大学院修士課程アーティスト・ディプロマコースを卒業。『めざましクラシックス』『12人のヴァイオリニスト』などのプロデュースを手がける傍ら、テレビやラジオなどでも活躍。
※女性セブン2021年1月21日号