国際情報

トランプ去って「バイデン独裁」に苦しむアメリカの憂鬱

トランプ氏は暴動直前に「議事堂に行け」と群衆をたきつけた(EPA=時事)

トランプ氏は暴動直前に「議事堂に行け」と群衆をたきつけた(EPA=時事)

 連邦議事堂へのトランプ支持者の乱入事件で、アメリカ政界の「トランプ離れ」は急速に進んでいる。しかし、それで国と国民の分断が解決する見込みは薄い。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏が、現地にいればこそ見えるアメリカ人の憂鬱をリポートする。

 * * *
 アメリカに永住して46年経った。今回の一連の事件、つまり極右勢力による議事堂襲撃という最悪の事態に対し、日本をはじめ諸外国ではアメリカが危機に瀕したと報じられている。しかし、筆者はそうは思わない。世界の多くの国が似たような危機を経験したが、たいていの国は再び立ち上がり、より豊かな、より良い国を国民が作ってきたと信じている。国は大統領や議会が作るのではなく、国民が作るものである。犯罪や民主主義を脅かすような間違った行動に出る大統領や議員を排除する権利を国民は持っている。

 今日のアメリカの課題は、そのような大統領や議員の行動・信条を、国民が知るすべを持っているかということだ。その役割を果たすのがニュースメディアであることは間違いないが、そのニュースメディアはいま、保守派とリベラル派に分かれ、国民を真っ二つに割るばかりだ。政治家と同じ土俵に上がってしまったのである。どのような出来事にも右左の価値観を当てはめ、安易な報道をするから国民が右往左往する。

 本題に入ろう。議事堂の暴動を受け、下院議長のナンシー・ペロシ氏(民主党)は、残り10日あまりで大統領職を退くトランプ大統領を弾劾すると息巻いている。同議長に問いたいのは、「退職を目前に控えたトランプ氏に大統領失格の衣を着せて辞めさせることで何が解決するのか」だ。トランプ氏と共和党を辱め、また新たに敵対心、復讐心を起こさせ、次の4年間も泥仕合を繰り返すだけではないだろうか。

 大統領選は、いつでも憎しみに満ちた戦いだった。お互いのスキャンダルを探し、「Gotcha!(ガッチャ)」(Got you!の略で、この場合は相手の弱みを「見つけた!」と喜ぶ言葉)と叫び、ひたすら攻撃する様を繰り返し何度も見てきた。候補者の世界観、国家論、そして人間の見方、価値観を堂々と戦わせた大統領選などなかったように思う。

 4年前、トランプ氏がヒラリー・クリントン氏を破った選挙はその典型だった。その1年前に上梓した拙著『なぜヒラリー・クリントンを大統領にしないのか?』で筆者は、クリントン氏はスキャンダルまみれになって勝てないと予測したが、さすがにトランプ氏が大統領になるとは夢にも思わなかった。彼が最もうまくライバルの弱みを攻撃したからだろうが、そういう選挙の在り方が何を招くか、アメリカ国民は歴史的な教訓を得たであろう。

 長年の友人で、ウォール・ストリートのエリートであるポールと話した。彼は大手投資銀行に勤務する筋金入りのトランプファンだった。「トランプは終わった。おそらく議事堂事件は、そうなることを望んだ勢力の罠にはまったのだと思うが、それを論じるのは適切でない。挑発に乗って怒り狂い、冷静さを失ったトランプは、大統領には不向きだったと言うしかない。しかし、ペロシの弾劾の動きも冷静ではない。勇み足だ」と語った。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「第8回みどりの『わ』交流のつどい」で、受賞者に拍手を送られる佳子さま(2025年12月、共同通信社)
「心を掴まれてしまった」秋篠宮家・佳子さまが海外SNSで“バズ素材”に…子どもとの会話に外国人ユーザーらがウットリ《親しみやすいプリンセス》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ・BLACKPINKのリサ(Instagramより)
《目のやり場に困る》BLACKPINKのリサ、授賞式→アフターパーティの衣装チェンジで魅せた「見せる下着」の華麗な着こなし
NEWSポストセブン
3月末で「FOMAサービス」が終了する
《3月末FOMAサービス終了で大混乱!?》ドコモショップで繰り広げられた「老害の見本市」な光景、店員を困惑させる年配客たち 暗証番号わからず「どうにかして」、説明する店員に「最近の若いヤツは気がきかない」
NEWSポストセブン
「新年祝賀の儀」で彬子さまが着用されていたティアラが話題に(時事通信フォト)
《これまでと明らかに異なるデザイン》彬子さまが着用したティアラが話題に「元佐賀藩主・鍋島家出身の梨本宮伊都子妃ゆかりの品」か 2人には“筆まめ”の共通項も
週刊ポスト
真美子さんが目指す夫婦像とは(共同通信社)
《新婚当時から真美子さんとペアで利用》大谷翔平夫妻がお気に入りの“スポンサーアイテム”…「プライベートでも利用してくれる」企業オファーが殺到する“安心感”の理由
NEWSポストセブン
「講書始の儀」に初出席された悠仁さま(時事通信フォト)
《講書始の儀》悠仁さまが“綺麗な45度の一礼” 「紀子さまの憂慮もあって細かな準備があった」と皇室記者、新年祝賀の儀での秋篠宮さまの所作へのネット投稿も影響か
週刊ポスト
デビットベッカムと妻・ヴィクトリア(時事通信フォト)
〈ベッカム家が抱える“嫁姑問題”の現在〉長男の妻・ニコラがインスタから“ベッカム夫妻”の写真を全削除!「連絡は弁護士を通して」通達も
NEWSポストセブン
ニューヨーク市警に所属する新米女性警官が、会員制ポルノサイトにて、過激なランジェリーを身にまとった姿を投稿していたことが発覚した(Facebookより)
〈尻の割れ目に赤いTバックが…〉新米NY女性警官、“過激SNS”発覚の中身は?「完全に一線を超えている」
NEWSポストセブン
厳しい選挙が予想される現職大臣も(石原宏高・環境相/時事通信フォト)
《総選挙シミュレーション》公明票の動向がカギを握る首都決戦 現職大臣2人に落選危機、高市支持派アピールの丸川珠代氏は「夫とアベック復活」狙う
週刊ポスト
「ゼロ日」で59歳の男性と再婚したと報じられた坂口杏里さんだが…
《3年ぶり2度目のスピード離婚》坂口杏里さんの「ふっくら近影」に心配の声…「膝が痛くて…でもメンタルは安定してます」本人が明かした「59歳会社員との破局の背景」
NEWSポストセブン
笑いだけでなく「ふーん」「ええ!」「あー」といった声が人為的に追加される(イメージ)
《視聴者からクレームも》テレビ番組で多用される「声入れ」 若手スタッフに広がる危機感「時代遅れ」「視聴者をだましている感じがする」
NEWSポストセブン
北海道日高町で店の壁の内側から遺体が見つかった事件。逮捕された松倉俊彦容疑者(49)、被害者の工藤日菜野さん。(左・店舗のSNSより、右・知人提供)
「なんか臭くない?」「生ゴミを捨ててないからだよ」死体遺棄のバーで“明らかな異変”…松倉俊彦容疑者が見せた“不可解な動き”とは【日高・女性看護師死体遺棄】
NEWSポストセブン