ウーバーの評判が悪くなると困る。同業でも怖い
「食い詰めてるの多いもん、先なんて考えらんないよ」
大久保の小さな公園、地べたにバッグを置いてうずくまっていた初老の配達員が話してくれた。
「ウーバーに落ちるってそういうこと」
耳を疑った。ウーバーイーツは元々「自由な時間を有効利用する」ギグワークだったはずが、このコロナ禍で食いつなぐためのシノギに変わった。2020年12月25日公表の労働力調査では完全失業者数195万人、2020年のコロナ関連の解雇者は1月15日集計だと見込みも含めて8万2050人(厚労省集計)となった。とくに外食や小売を中心としたアルバイトは深刻で解雇はもちろん、必要なだけのシフトに入れず、やむなくウーバーイーツという人もいる。そしてベテラン配達員が口々に訴えるのが新規パートナーの参入による競争激化とモラル・ハザードだ。西新宿、ニット帽に金髪ロングの配達員がこぼす。
「白ナンとか知らないでやってるのもいるんじゃないすか。注意してもわかってないっぽいし。容赦なくチクリますけど。ウーバーの評判悪くなると困るんで」
これは切実な話だろう。評判の悪さが仕事に支障をきたし始めている。それまで迷惑をかける側とされたウーバーイーツ配達員が一般車両に煽られたり、街中で一般市民に罵られたりする事案が増えた。「底辺」呼ばわりで蔑まれたという証言もある。自業自得と切り捨てるのは簡単だが、全員がマナー違反や犯罪行為をしているわけではない。
「何考えてるかわかんないヤツもいますし、同業でも怖いヤツもいます。でも多くはちゃんとしてますよ。まして白ナンなんてガチで犯罪だし、するわけない」
ウーバーイーツの白ナンバー営業なんて本当にごく一部の連中だし、れっきとした犯罪だ。見つけ次第、先のウーバージャパン「お客様相談室」の相談フォームに報告してもいいし、犯罪なので警察に通報だって構わないだろう。もっとも、筆者のケースも結局そうだったが、警察もこの程度ではなかなか動いてくれないのが現実なのだが ―― 道交法違反、地蔵行為、プライバシー問題、白ナン営業、なにもかも過渡期のウーバーイーツ、今年もコロナ禍に利用者を伸ばすと同時に世間を騒がしそうだ。
ともあれ、白ナンバー営業だけは本当にやめてほしい。知らなかったとか、軽い気持ちなど許されない。重ねるが規約違反のみならず犯罪である。大きな事故でも起こせば、保険も適用されず一生が終わる。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。2017年、全国俳誌協会賞。2018年、新俳句人連盟賞選外佳作、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞。寄稿『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社)、著書『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)など。