国内

地方医学部は東大卒の「人生再生工場」か、再入学した卒業生の告白

(写真はイメージ)

人生を再出発するため地方の医学部に再入学する東大卒業生は今後増えていくという(写真はイメージ)

 日本の知の最高峰とされる東大。その卒業生ともなれば、大きな挫折もなく順風満帆な人生を歩んでいる、そう思う人は多いだろう。しかし、誰もが羨む肩書きを持つがゆえ、最初の就職先を誤ると大きな方向転換を迫られることもある。『東大なんか入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話』(飛鳥新社)の著者で、自身も東大出身のライター・池田渓さんがリポートする。

 * * *
 東大卒という学歴は、時として人のコンプレックスを意図せず刺激する。同窓生が少ない地方に東大卒の肩書きを引っ提げて就職すれば、激しい逆学歴差別やイジメを受けることもある。東大文学部を卒業後、地元である関西の市役所職員として働き始めたY氏(男性、就職当時25才、現在33才)もその洗礼を受けた一人だ。

 公務員になろうとする東大生の多くは、学生のうちに国家公務員総合職(旧・国家公務員I種試験)や国家公務員一般職試験(旧・Ⅱ種)をクリアして、卒業後は中央官庁に入る。東大卒のY氏のように地元に帰って市役所職員になるケースは珍しいが、ちょうど進路を選択する時期に地元の親御さんが大病を患ったため、大学院への進学を諦めてなるべく近くにいてあげることにしたのだという。

 Y氏の「東大卒」というキャラクターを標的にした職場の先輩たちのイジメは、勤務初日から意図的な“ネグレクト”の形で始まった。鳴り物入りで入ってきた東大卒の新人が自分たちの立場を脅かすようになる前に、職場内での「格付け」を終えておきたかったようだ。

「ぼくが東大卒でなければ、あそこまでつらい目には遭わなかったはずです」(Y氏、以下同)

 それまで「高学歴」とされる人間のいなかった職場に、東大卒という「異物」が混入したことで起きたイジメ。筆者が彼に直接会ってインタビューをしたときには既にイジメから何年も経っていたはずだが、当時のことを話し始めるとY氏は顔を大きく歪めた。彼にとって余程つらい記憶のようだった。

 その残酷なイジメの詳細については拙著に譲るが、Y氏は1年半ほど働いた後、市役所を退職した。辞める直前には、ストレスから胃に潰瘍ができ、激しい腰痛でまともに動けなくなっていたという。ひどいときは排便も困難で、そんなときは親御さんに補助してもらうこともあった。病気の親御さんの近くにいてあげるための地元での就職だったのに、逆に親御さんに介護されていたのでは本末転倒だ。

あわせて読みたい

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン